悲劇の工場は最先端工場へ生まれ変わりつつあった
続いて我々が訪れたのは、マツダの悲劇に巻き込まれた防府工場である。余談であるが、この工場のそばには、ブリヂストンのタイヤ工場などもあり、まさに一大工業地帯だ。
「匠の技をすべてのお客様へ」をモットーとしているマツダ。魂動デザインになってからのマツダ車はそれが顕著で、当然好き嫌いはあるにしろ、現在ラインアップされているマツダ車はどれもデザインに関しては国産車離れした、美術作品のようなデザイン、そして仕立てとなっている……と、個人的には感じている。つい撫でたくなるデザインとでもいおうか。
マツダ CX-5画像はこちら
ここ防府工場は、前述のようにマザー工場であるので、建屋の雰囲気や見た目こそ一般的な工場とさほど変わらないが、投入されている技術は最先端。たとえば、1分間で13枚も加工できる2400t級のプレス機や、ガソリン車も電動車も混流生産可能な生産ライン、匠塗りともいわれるマツダ車の美しい塗装を可能とする最先端の塗装ロボットなど、高精度かつ高効率な生産を叶える。これをマツダでは、「ものづくり革命1.0」と称しているそう。この革命前は、車種ごとにパーツを用意したりラインをわけたりしていたので、生産効率が悪かったそうだ。車種が違うので、当たり前といえば当たり前だが……。
マツダ 防府工場の様子画像はこちら
なおここ防府工場では、ラージ商品群をメインに生産しているとのこと。ラージ商品群とは、「CX-60」「CX-70」「CX-80」「CX-90」といったFR駆動のSUVたちだ。社員は200〜500名(勤務形態などによる)、ロボットは1300機ほどいるそうだ。マツダはここのほか、世界に7カ所の工場を有している(トヨタは40カ所あるそう)。関係者は「うちは小さい会社なので……(笑)」と謙遜していたのが印象的であった(小さいのか!?)。
マツダ 防府工場の様子画像はこちら
工場の関係者は、「マツダの工場は”根のないライン”を目指しています。AGV(Automated Guided Vehicle:無人搬送車)を活用し、メンバーやエンジンなどをフレキシブルに移動させ、効率よくクルマを組み立てています。これにより、車種が変わったり、新車が出たりしてホイールベースが変わってもすぐに対処できます。また、10年後を見据えて各社のパーツを考えているので、新車の開発やマイナーチェンジがあってもすぐに対応できるよう、工数削減にも努めています」とのこと。
マツダ 防府工場の様子画像はこちら
最近では「ものづくり革命2.0」に移行したことにより、より柔軟性が向上して、AIや3Dを用いて設備のテストや保守点検ができるようになり、より効率のいい生産ラインへ進化したそうだ。ほとんどが自動化されているようで、組み立ての90%は機械、人が関わるのは10%ほど。ちなみに防府工場では、電動化に対応するために、「ものづくり革命3.0」への計画も順次進めている最中だという。
マツダ 防府工場の様子画像はこちら
なかでも特徴的なのはドア類の取り付けで、ドアの隙間は美しく見える数値として、「3〜3.7mm」に収まるように調整されており、あわせてフロントフェンダーも人が取り付けているそう。この精度は機械では出せないようで、職人の出番というわけだ。ちなみにロードスターに関しては溶接などを含め、かなり人の手が入っているとのことで、「あれは特殊なクルマ」だと教えてくれた。
マツダ・ロードスター(ND型)画像はこちら
防府工場のこれらの機械のほとんどは自社で保守点検が可能で、万が一のトラブルがあっても、早急に対応できる体制になっているのも強み。生産ラインに関しても、新車が出るたびではなく、5〜10年後を見据えて設計しているので、新車がいくら出てもすぐに対応できるのがここ防府工場の自慢だ。さらに生産ペースは1分間に1.56台で、納期遅延を起こさないような取り組みも進めている。
ちなみにクルマに限らずこれらの工業製品は、どうしても不良品というのが出てしまうことがある。しかし実際問題、リコールレベルの話は聞くが、クルマの不良品というのは筆者のまわりではほとんど聞いたことがない。ぶっちゃけマツダではどうなのだろうか? 耳が痛い話かもしれないが聞いてみた。
WEB CARTOP 編集部 井上画像はこちら
すると、「絶対にないかといえば、工業製品なのでゼロとはいい切れません。しかし、ほぼゼロといっても過言ではないかと。20年前は100台に1台くらいは微調整などが必要な個体もありましたが、いまでは600台に1台あるかないかです。ちなみにここでいう不良品というのは、製品としてダメなのではなく、次の工程に進めない個体をいいます。それでもごくわずかな「これでダメなの?」レベルの数値の違いです。全車を都度チェックしているので、完成時にアウトとなるクルマはほぼゼロです」とのこと。
マツダメディア体験会(2026)の様子画像はこちら
広島を象徴する巨大企業、マツダの魅力を「これでもか!」というほど詰め込まれた濃密すぎる1日であったが、なんとこの次の日もマツダを学ぶプログラムが組まれており、まさに別の意味でマツダ地獄! 2日目のリポートは近日中にまた別記事でお届けしたい……。このままでは本当にマツダ博士になってしまうぞ!?