冬道で制動不能に陥るオールシーズンタイヤのリスク
一般的なサマータイヤと比較すると、オールシーズンタイヤはコンパウンドがやや柔らかく、ブロックの剛性が低いためハンドル操作に対する応答性が緩慢になる傾向がある。とくに高速走行時や旋回中の過渡特性では、車両のヨーモーメントの立ち上がりが遅れ、舵角に対する反応がわずかに鈍る。
また、制動時の接地圧変化に対しても変形が大きく、乾燥路での制動距離は夏タイヤ比で約5〜10%程度長くなる傾向がある。ウエット路では、シリカ配合による親水性の効果で夏タイヤに近い制動力を発揮するものの、極限条件下では依然として夏タイヤのほうが安定している。
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したがって、ドライ/ウエット路での運転においては、ブレーキ操作やステアリング操作を急激に行わず、タイヤの変形と接地の遅れを見越した運転操作を意識することが求められる。
一方、氷雪路性能を最優先しているスタッドレスタイヤは乾燥路・ウエット路でのグリップ性能は著しく低下する。とくに摩耗した状態ではサイプが潰れ、ブロック剛性がさらに低下するため制動距離は大幅に延びる。
対してオールシーズンタイヤはブロック剛性が高く、夏タイヤ寄りの特性を持つため非積雪時期の一般路走行においては明らかに優位だ。
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そして積雪路では、スタッドレスタイヤが雪をつかんで剪断力を発揮する構造を持つのに対し、オールシーズンタイヤはあくまで雪に密着する設計思想に近い。
軽度の新雪やシャーベット状の路面であればトラクションを確保できるが、深雪路や凍結路ではグリップが低下する。とくに氷、水、雪が混在する路面ではグリップを発揮しにくく、制動距離がスタッドレスタイヤの約1.5〜2倍に達するケースもあり、とくに速度の出やすい下り坂などでは制動不能に陥るリスクがある。
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冬用タイヤの選択は車両の制御技術とセット
現代の4WD車や電子制御システムを備えた車両では、オールシーズンタイヤとの組み合わせによって一定の実用性が得られる。
しかし、2輪駆動車や電子制御装置の少ない旧型車では駆動力を失いやすく、低μ路での挙動が急激に乱れることがある。オールシーズンタイヤの性能を過信せず、車両のトラクション制御能力とセットで評価することがきわめて重要だ。
オールシーズンタイヤは、降雪地に居住するユーザー、あるいは冬季に頻繁にスキーなどで山岳地帯へ出向くユーザーには適さない。あくまで都市部などで、年に数回あるかないかの降雪に備える保険的な存在として位置づけるべきである。
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タイヤは車両の性能を路面に伝える唯一の要素であり、その設計はつねにトレードオフの上に成り立っている。
オールシーズンタイヤは万能ではないが、技術進化によってその性能領域は確実に広がっている。高温化で硬化し、ウエットでは軟化するコンパウンドが開発され、乾燥路・ウエット路でも夏タイヤに近い安定性を得られ、軽度の雪にも対応可能な商品も登場してきている。
一方、不安定な氷雪路ではスタッドレスタイヤにはまだまだ及ばず、さらにスタッドレスタイヤであっても完璧とは言えない状況もある。そうした意味でもドライバーはつねに走行速度、制動距離、操作入力を慎重に管理することが不可欠だ。
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季節を問わず安全を確保するためには、タイヤの性能限界を知り、それを補う運転技術と車両特性に対する理解が欠かせない。オールシーズンタイヤを選ぶ際も、利便性を取るのではなく、制限された合理性として受け止めるべきだ。雪道を心配するなら、まずは最新の電子制御を備えた4WDであるべき。タイヤ選択の自由度はその先のことととらえてほしい。
講師 中谷明彦
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武蔵工業大学工学部機械工学科(塑性工学専攻)卒。理論派レーサー/ジャーナリストとして活動する一方、新車やタイヤの開発にもかかわり、4WD車や電子制御による車両運動性能の解析を得意分野とする。1997年より座学のみによるドライビング理論研究会「中谷塾」を開設し、現インディカードライバー・佐藤琢磨らを輩出。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。現在の愛車はジープ・ラングラー(PHEV)。
※本記事は雑誌「CARトップ2026年1月号」の記事を再構成して掲載しています