ドライレース専用の溝のないタイヤ”スリック”
自動車のタイヤといえば黒いゴムでできていて丸いもの。また、空気が充填されていて、パンクなどで空気が漏れると使えなくなる、というのが一般的に理解されているところだろう。
そんなタイヤを見ると、表面に模様があることが見て取れる。”トレッドパターン”と呼ばれるこの模様のような溝はなぜあるのか? そこに役割はあるのか? などを解説したいと思う。
タイヤに溝があるのは当然だと思っている人は多いが、溝がまったくないタイヤも存在する。レースなどモータースポーツの世界で採用される”スリックタイヤ”と呼ばれるタイヤは溝がいっさいない。
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「坊主タイヤで走ったら滑って危なくないですか?」とたびたび聞かれるが、溝はタイヤが発揮するグリップ性能と関係していると考える人が多いようだ。
タイヤが路面と接する部分をトレッドと呼び、トレッド面の模様からトレッドパターンと呼ばれる。溝が構成するパターンは多彩で、いわばタイヤの「顔」ともとらえられている。タイヤには横幅や直径など、さまざまなサイズがあるが、固有のパターンで個々のモデルが見分けられることが多い。
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トレッドパターンは多種多様で、見た目のよさにも影響している。デザインとして外見的な特徴としてとらえる人も多いが、ほかにも多くの機能や役割が与えられていることを覚えておきたい。
接地面に刻まれた溝が効率よく路面の水を排出
トレッドパターンにはいくつかの要素がある。それはタイヤの回転(=進行)方向に対して縦溝(ストレートリブ)であるか、横溝(ラグパターン)なのか、あるいは斜めに刻まれているのかだ。その組み合わせ以外に幅や深さなども異なる。
まず縦溝について見てみよう。大半のタイヤには縦溝が存在する。その幅が太いもの、細いものがあり、また縦溝の数にも違いが認められる。
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一般的に、縦溝が果たす役割はウエット路面での排水性であると考えられている。縦溝の幅が広く、本数が多く、溝は深いほど排水能力が高い。排水能力が高ければ、ハイドロプレーニング現象が起こりにくく、安全性が高まる。幅1cm程度の縦溝が3〜4本あれば、雨の日の高速道路でも安心して走れると考えていいだろう。
ラグパターンと呼ばれる横溝は、悪路での駆動力や制動力など前後方向のグリップを引き出す機能があるとされる。雪道や泥濘(でいねい)路などの滑りやすい悪路において、パターンのなかに泥や雪を固めて封じ込め、その剪断剛性をグリップとして使うのだ。そのため軍用のジープやトラックなど、不整路を走る機会のある車両ではラグパターンやブロックパターンのタイヤを装着している例が多い。
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斜めのパターンは、高速で回転するタイヤにおいて、遠心力によってトレッドパターンに保持された水や泥を弾き飛ばす役割が与えられている。高速走行を重視したタイヤやスポーツカーなどに多く採用されている。
前述のスリックタイヤは乾燥(ドライ)サーキット専用のタイヤであり、雨天時はレースカーも溝を設けたタイヤに履き替えているのだ。
ウエット性能を左右する”ランド”と”シー”の比率
このようにトレッドパターンとして刻まれた溝にはそれぞれ役割があり、形状や数、深さがさまざまな路面コンディションへの適合性を示していると理解できるだろう。
公道用タイヤでも”Sタイヤ”と呼ばれるサーキット走行を主眼としたタイヤは極端に溝が少なく、スリックタイヤに限りなく近いデザインを採用している。これはトレッドを構成するコンパウンドゴムが路面に接地する面積を大きくするのが主目的で、ゴムのグリップ特性をフルに引き出し、スリックタイヤに近い特性としているためだ。
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トレッドの溝とコンパウンド部分の比は”ランド:シー比”と呼ばれ、ランド(=陸)の値が大きいほど、コンパウンドゴムの接地面積が広く、ドライグリップで有利であることがわかる。逆にシー(=海)、溝部分が多ければ接地部分の水を一時的に蓄える機能が高く、ウエット路面での排水性能が向上し、ハイドロプレーニング現象の抑制が期待できる。そして縦溝、横溝ともに多ければ全天候型タイヤとしての性能を期待できるというわけである。
またスタッドレスタイヤのトレッドパターンを見ると、より細かな溝が多く刻まれている。これらは”サイプ”と呼ばれる溝で、氷の表面に存在する水を吸って氷結路でのグリップ特性を高めているものだ。
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タイヤは回転方向(=縦方向)のグリップだけでなく、旋回時には横方向のグリップが必要で、また操舵輪には転舵によってスリップアングルがつく。そのため、直進状態では斜めの溝が、旋回時や転舵時に接地面で縦溝となるような工夫もあり、トレッドパターンはさまざまな顔を持っているのである。