「ホイールアライメント調整とか走り屋の話でしょ?」は大間違い! 街乗りしかしない人でも知っておくべきサスペンションの話 (1/2ページ)

ホイールアライメントはまずジオメトリーが基本

 ジオメトリーとホイールアライメントは混同されがちだが、それらの意味合いはまったく異なる。

 ジオメトリーは、車両のサスペンション構成部品の配置関係を指す設計幾何学上の概念だ。アームの長さ、取り付け位置、ストラットの傾斜、ロールセンターの設定といった構造的要素を含み、車両が加減速、旋回、ロールなどによってどう姿勢変化するか、そしてタイヤがどんな角度で接地し続けるかを定義づける。

 一方、ホイールアライメントは、実際に組み上げた車両において、各ホイールの向きや角度を計測・調整した数値のことである。キャンバー角、キャスター角、トー角の3つが主なものだ。

 つまりジオメトリーは設計図であり、ホイールアライメントは現物の調整値とも言える。両者は密接に関連しながらも、まったく異なる次元でクルマの挙動を決定しているのだ。

 ジオメトリーがすぐれていれば、サスペンションの動きと連動して理想的なホイールアライメントの変化が生まれる。

 たとえばダブルウィッシュボーン式サスペンションは、旋回中に外輪が沈み込むことでネガティブキャンバーを自動的に強め、タイヤの接地面積を維持することが可能になり、逆にストロークの過程でキャンバー角をポジティブに変化させることもできる。

 仮にジオメトリーが理想的でもホイールアライメントが正しく設定されていなければ、走行性能は著しく損なわれる。直進安定性は悪化し、コーナリングではアンダーステアやオーバーステア傾向を強めてしまう。

 サスペンションジオメトリーの設計には自由度の大きい仕組みが求められ、とくに長いサスペンションアームや、取り付け位置の確保が課題となる。これはきわめて奥深い要素なので、今回はジオメトリーを活かす構成要素である、ホイールアライメントの理解を深めることに絞って解説しよう。

正確に把握すべき3つの要素が及ぼす影響

 ホイールアライメントは停止した状態で計測される。これを「スタティックな状態で行う」と表現するが、自動車の生産ラインでは計測台の上に車両を固定し、4輪の向きを多角的に計測しながら設定値に合うように1台ずつ調整するのだ。

 ここで重要なのは、トー、キャンバー、キャスターという各ホイールアライメントの要素が走行特性にどのように影響するかを正確に把握できているかだ。

 通常、トー角は進行方向に対して前方が開くトーアウトに設定される。その度合いは車両ごとに異なり、0.3〜3度というように細かく調整していく。トーアウトにする理由は、キャンバー角がネガティブ(タイヤ下方に向かって広くなる)である場合、”キャンバースラスト=キャンバー抵抗”としてタイヤが内側に倒れ込む力が発生するのを相殺し、直進性を保つためだ。

 キャンバー特性の説明では二輪車を例に出すことが多い。二輪車を左右どちらか片側に傾けると、車輪は傾けた方向に転がろうとする。これがキャンバースラストと呼ばれるもので、自転車やオートバイはそれを利用することで向きを変えることができるのだ。

 自動車の場合は左右に車輪があり、同じ力で引っ張り合うことで直進性を引き出すようになっているわけだ。

 逆にトーインを強め、左右輪が同じ力で押し合うように調整するケースもある。これはレーシングカーで鋭いターンイン特性を狙うような場合、有利に作用する。


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中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2026-2027日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
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海外巡り
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