10年以上も放置するのはなぜ? モデルチェンジしてもらえないクルマ4選とその理由 (2/2ページ)

きちんと向き合い開発すれば魅力たっぷりのモデルばかり

■トヨタ エスティマ(2006年1月発売)

 本来ならば現行ヴェルファイア&アルファードと共通のプラットフォームを使ってフルモデルチェンジすべきだが、マイナーチェンジで済まされた。緊急自動ブレーキを装着したが、コンパクトカーに多く使われるトヨタセーフティセンスCだから、歩行者を検知できない。基本設計が古いので、上級版の歩行者も検知可能なトヨタセーフティセンスPは装着できなかった。

 マイナーチェンジにとどめた理由は、ミニバン市場とエスティマの販売動向が不透明であるからだ。売れ行きが下がったとはいえ、1カ月に900台程度は売れるから、廃止するのも惜しまれる。その結果、中途半端なマイナーチェンジを行った。国内市場の可能性に賭けてフルモデルチェンジを行い、力を入れて売れば、トヨタが後悔することはないと思う。エスティマはそれだけ優れた商品で、ディーラーのトヨタ店とカローラ店の販売力も強靭であるからだ。

■トヨタ プレミオ&アリオン(2007年6月発売)

 今の国産セダンは大半が海外向けに開発され、国内の売れ行きを下げた。1990年代の中盤にミニバンが普及してセダンが販売台数を低下させたとき、本腰を入れて回復に乗り出せば良かったが、これを怠ったから取り返しの付かない不人気カテゴリーになった。

 そのために今では運転しやすい5ナンバーサイズのセダンは、トヨタカローラアクシオ、トヨタプレミオ&アリオン、ホンダグレイスに限られる。このなかでプレミオ&アリオンは、5ナンバーセダンながらホイールベース(前輪と後輪の間隔)を2700mmに設定して車内が広く、内装も上質だ。

 フルモデルチェンジすべきだが、国内市場の重要性が下がったためにマイナーチェンジで済まされ、前述のトヨタセーフティセンスCを装着したにとどまる。今では走行安定性、乗り心地、シートの座り心地などに古さが感じられ、「車内の広い5ナンバーセダン」という特徴は大いに魅力的だが、積極的には推奨できない。法人ユーザー、レンタカーなども含めて需要は多いから、5ナンバーサイズを守ってフルモデルチェンジをすべきだ。

■日産キューブ(2008年11月発売)

 全長が3890mmに収まるコンパクトカーだが、全高は1650mmと高く設定され、広い室内を備える。内装は和風をテーマにデザインされ、シートは前後席ともにソファ風だ。リラックスできる柔和な内装を特徴とする。ガラスルーフには、SHOJI(障子)シェードとロールブラインドも備わり、車内は柔らかい光で満たされる。

 今の日本車は、エコロジーを唱えながら、デザインは軽自動車のカスタムまで含めて目を吊り上げた迫力重視が多い。周囲のクルマを蹴散らして走る世界観が横行している。このなかにあってキューブは、内外装を穏やかに仕上げ「心地好いからゆっくりと時間をかけて走りたい」と思わせる。今の日本に求められているのは、キューブのような世界観の新型車だろう。緊急自動ブレーキも装着されず売れ行きは低迷するが、改良を施せば販売は必ず上向く。今の放置状態はじつに惜しい。

■ダイハツ ミラココア(2009年8月)

 外観のイメージが似通ったアルトラパンは、初代モデルを2002年に発売して、2008年には2代目にフルモデルチェンジされている。そのために2009年8月にミラココアが発売された時は、アルトラパンの後追い的な印象を拭えなかった。売れ行きも低迷した。

 それでも穏やかな内外装と、立体駐車場を使える全高の組み合わせは魅力。同様のコンセプトで、デザインの路線は一新し(とても難しい注文だが)、アルトラパンに負けない個性的な後継車種を投入してほしい。


渡辺陽一郎 WATANABE YOICHIRO

カーライフ・ジャーナリスト/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ポロ(2010年式)
趣味
13歳まで住んでいた関内駅近くの4階建てアパートでロケが行われた映画を集めること(夜霧よ今夜も有難う、霧笛が俺を呼んでいるなど)
好きな有名人
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