軽で5年連続トップのホンダN-BOX! 日本一売れていても手放しでは喜べない軽自動車特有の事情とは (2/2ページ)

軽自動車の販売に注力するほどディーラーの収益を圧迫する結果に

「軽自動車だって売れているのだからいいじゃないか」という声もあるかもしれない。しかし、まず軽自動車は新車販売のなかでも利幅の薄い商売となるので、薄利多売が使命となっている。生産工場の稼働率維持のための量産が続くこともあるが、軽自動車販売では、ディーラーがあらかじめ在庫をストックし、その在庫車を売るのが一般的な販売スタイル。そのため、ディーラーでは抱えた在庫の早期販売により、軽自動車販売に忙殺され、しばしば登録車販売がおざなりになるといった話も販売現場では聞く。

 さらに、販売したあとにディーラーに利益をもたらしにくいほうが問題は大きいともいわれている。いまどきの新車販売で得られる利益はごくわずか。そのため、納車後の定期点検や修理、物販などでの収益を重視している。一定期間内の点検・整備代などを前もって払うことで得になる、“メンテナンスパック”も、アフターメンテナンス収益確保のための“囲いこみ策”との意味合いが強い。

 しかし、そもそも軽自動車を選ぶユーザーの多くは、維持費を抑えたいという動機もあって軽自動車を選んでいるので、アフターメンテナンスも出来るだけ出費を抑えたいと考えがちだ。そのためディーラーではなく、格安車検業者など外部業者にメンテナンスを任せるケースが登録車よりはるかに目立っている。つまり、“売り切り”になるケースも多く、このほうが薄利多売をすることよりも、軽自動車販売に注力することによるディーラーの収益圧迫の大きな要因になるとされている。

 もちろん魅力的なクルマだから売れているのだろうが、魅力的だからこそ今まで乗っているホンダの大きなクルマから、「これでいい」と一気にダウンサイズして代替えするホンダユーザーも多いのも、ディーラーとしては悩みの種。また一度N-BOXへ乗り換えると、それ以降は代々N-BOXへの乗り換えを続けるホンダ車ユーザーも多いそうだ。

 ただ他メーカー車からN-BOXに乗り換えてもらったとしても、軽自動車ユーザーは車種へのこだわりがあまりない人も目立つ。そもそもブランドへの強いこだわりもないケースも多いので、N-BOXから再びライバル車へ乗り換えられることもあるとのこと。つまり、数多く売れたとしても、なかなかディーラーを潤すような結果につながらないのである。

 過去にはアコードやシビック、ステップワゴンやオデッセイなど、登録車販売がメインであったホンダディーラーが、いまでは軽自動車販売がメインとなったのだが、郊外のバイパス沿いには、大きなショールームを構えるメガディーラーが数多く存在する。それでは軽自動車販売メインの割には、光熱費などの一般管理費も含めてコストとのバランスが取れていないようにも見える。

 ちなみにスズキやダイハツでは、とくに軽自動車の場合は協力整備工場などの“業販店”を通しての販売比率が高いので、正規ディーラーで時間と労力とコストをそれほどかけずに軽自動車の量販を可能としている。

 さらに、軽自動車の場合は販売競争の激しさもあり、自社届け出(ディーラー名義などで未使用の在庫車にナンバープレートをつける)を行い、販売台数の上積みを行う(これが未使用中古車としてそのまま流通したり、試乗車や代車で少し使ったあとに中古車として流通する)のが、とくに常態化しており、N-BOXだけでなく、多くの軽自動車の販売台数のうち結構な割合で自社届け出が行われていると考えられている。

 日本一売れているクルマとなるのは、それだけ魅力的なクルマでもあり名誉なことだが、手放しで喜べない“現実”がそこにはあるといえよう。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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