【燃費悪いならエンジン車でいいんじゃない?】ハイブリッドの「うま味」が感じられないクルマ3選 (2/2ページ)

運動性能確保のためにモーターを使用するモデルも

2)ホンダNSX

 さらに、モーターによる走りを特徴的に感じることのできる唯一無二の存在がホンダNSXでしょう。ミッドシップ・レイアウトのパワートレインは3.5リッターV6ツインターボを軸にしたもので後輪は9速DCTを介して駆動。その中に薄型モーターを組み込むことでトラクションのコントロールやリニア感の向上などにつなげています。

「スポーツハイブリッドSH-AWD」と名付けられた、このシステムの肝はフロントの駆動系です。左右独立モーターは、駆動と回生ブレーキを巧みに操ることで、従来のクルマとはまったく異なるハンドリングを実現しているのです。ナチュラルな味つけもできれば、モーター制御でしか実現できないセッティングもできるという特性を理解してドライビングしていけば、まるで左右の手がそれぞれフロントタイヤとつながったかのような、異次元の人馬一体が感じられるのです。この独特の走り味が2420万円という価格で購入できるというのは適正価格といえるかもしれません。

 NSXを購入しようというユーザーであれば、こうしたメカニズムの特性は理解した上で、契約書に印を押しているでしょうから釈迦に説法ですが、ハイブリッドだからといって燃費に期待するタイプのクルマではないのです。あくまでスポーツドライビングのためのハイブリッドシステムです。

 WLTCモード燃費は10.6km/Lとはいえ、V6ツインターボと3つのモーターをあわせたシステム出力427kW(581馬力)を誇ります。スーパースポーツとしては優秀な燃費性能といえます。このカテゴリーのなかにおいてはハイブリッドという記号に期待する環境性能を備えたモデルというべきなのかもしれません。

3)スズキSWIFT HYBRID RS

 スズキの人気モデル「スイフト」には二種類のハイブリッドシステムが用意されています。ひとつはスズキ独自の5AGS(5速AMT)に10kWのモーターをインストールすることで、AMTのギクシャク感をスムースに変身させ、また変速ギヤのチョイスによりEV走行も可能というシステム。もうひとつはISGとリチウムイオン電池を組み合わせた、本当に簡易的なマイルドハイブリッドです。前者のシステムを積むグレードが「HYBRID SL」、後者を積むのが「HYBRID RS」です。

 モーター出力からするとアシスト型のマイルドハイブリッドに感じる「HYBRID SL」ですが、実際に運転してみるとモーターのリニア感と、中身はMTそのままといえるAMTのダイレクト感があいまってハイブリッドというよりはEVに近いドライブフィーリングがあります。市街地走行レベルであればモーターをエンジンがアシストするといった感触さえあるほどで、新鮮な乗り味を実現しています。

 その好印象のまま、同じようなハイブリッドシステムだと思って「HYBRID RS」に乗ると、だいぶ違うと感じることでしょう。こちらはISGだけを使った、本当に簡易的なハイブリッドで減速エネルギーのよって溜めた電気を発進時のアシストなどに使うというもの。電気駆動の存在感は希薄で、走行フィーリング自体はガソリンエンジン車となんら変わらないといえます。ちなみに、JC08モード燃費を比べると、「HYBRID RS」は27.4km/L、「HYBRID SL」は32.0km/L。エンジンは基本的に同じK12C型1.2リッター直列4気筒となっていますから、この差はハイブリッドシステムの差といえます。

 もともと燃費性能は悪くないスイフトですから、燃費のためにハイブリッドを選んだユーザーが失望するようなことはないでしょうが「HYBRID SL」の評判を聞いて「HYBRID RS」を買ってしまうと「あれ、なんか違うぞ」と思ってしまうかもしれません。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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スズキ・エブリイバン(DA17V・4型)/ホンダCBR1000RR-R FIREBLADE SP(SC82)
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モトブログを作ること
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