トヨタとBMWの共作「GRスープラ」! カギも室内のアチコチもBMWのままな理由とは (2/2ページ)

そこにコストをかけるなら走行性能を磨き上げたかった!

 じつは、こうした部分についてGRスープラのデビュー時にチーフエンジニア(CE)の多田哲哉さんにうかがったのですが「ウインカーの位置を変えるお金があるなら、走りを煮詰めるほうに使うべきだと考えた」という答えが返ってきました。当初、ウインカーレバーが左にあることに儲けるためのコストダウンだろうと考えていた自分を恥じたものです。

 走りに直接関係のない部分は可能な限りBMWと共通化することでコストを抑え、「スープラ」という名前に期待される走りを高めることにリソースを振り分けたという、ひとつの象徴が左側のウインカーレバーなのです。その他BMWと共通している部分があることも、走り重視の姿勢によるものと理解できれば、逆にウェルカムだと感じてきます。

 前述した多田CEのかかわったスポーツカーにはトヨタ86/スバルBRZという兄弟車もありますが、こちらではボディパネルなども共通化した上で、メーターパネルであったり、サスペンションセッティングであったりといった部分で差別化していました。

 スポーツカーというのは絶対数でいうと大量に売れるわけではありません。そのため限られた予算をどのように配分するのかがスポーツカーとしての個性を生み出す肝になります。GRスープラに関していえば、スポーツカーらしいオリジナルのボディやアクティブデフにより異次元の走りを煮詰めることにコストをかけるため、直接走りには影響しない部分は共通化することでバランスをとったというところでしょうか。

 こうしたコストバランスというのは車種によっても異なります。バッジエンジニアリングと呼ばれるグリルやエンブレムを変えただけのOEM車では、ハードウェア的にはほとんど変えていないモデルが大多数です。OEM車ではグレード設定も絞っていることも珍しくありません。

 おもしろいのは機能に関するネーミングに関する考え方です。日産と三菱自動車が共同開発している軽自動車では先進運転支援システムのネーミングについて、日産は「プロパイロット」、三菱自動車は「マイパイロット」と変えています。

 一方、スバルで扱っている軽自動車(ダイハツからのOEM)では、ステレオカメラを使った先進安全装備についてスバル的なネーミングの「アイサイト」ではなく、ダイハツの名付けた「スマートアシスト」のままだったりします。メーカーごとにブランディングや技術への考えがあるので、どちらが正しいというわけではありませんが、それぞれの状況によってスタンスが異なることもあるのです。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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スズキ・エブリイバン(DA17V・4型)/ホンダCBR1000RR-R FIREBLADE SP(SC82)
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モトブログを作ること
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