いまでも「FR最高説」多数なのになぜ? 自動車メーカーは「FF車」を中心に据えるワケ (2/2ページ)

キャビンの広さや燃費性能ではFFに軍配が上がる

 ハンドリングに関する部分などFRに有利な部分があるのは認めつつも、燃費性能というわかりやすい指標において不利という理由によって大衆的なニーズを満たすためのセグメントからFRは消えていった歴史がある。

 そのハンドリングについてもかつてのようにFFが圧倒的に不利という時代でもない。タイヤの性能が向上したことや、シャシー設計のレベルが上がったことで、FFであってもアクセル操作で姿勢コントロールすることが可能になっている。様々な電子制御の恩恵もあって、パワーを入れたからすぐにアンダーステアになるということもない。さすがにドリフト走行を維持することは難しいが……。

 また、大衆車に求められるのはキャビンの広さだが、その点でもFFは有利。前述したようにプロペラシャフトがないため比較的フラットなフロアを実現することができるのだ。たとえばバスがRR(リヤエンジン・リヤ駆動)としているのもキャビンを広くするという発想では同じ方向だ。とにかくプロペラシャフトをなくしたいのだ。

 その意味では4WDというのはキャビンの広さ的には不利なレイアウトだが、FRよりも安定性に優れること、降雪地域でのニーズやハイパワーを四輪で受け止めるメリットなどから増えている傾向にあるのはおもしろい。

 とはいえ、トラクションコントロールや横滑り防止装置といった電子制御のおかげもあってFFだからといって駆動能力が明らかに劣って感じるという時代でもなくなっている。冒頭、商用車はFRが主流と書いたが、欧州系の1BOXバンではFFだけの設定というのも増えてきているし、国産でもライトバンクラスは基本的にFF中心だ。だからといって荷物を積んだときのトラクションに劣るといった声も聞かない。

 効率を考えるとエンジンで動く自動車はFFになるというのが結論といえる。ただし、未来永劫、前輪駆動が主流になるとはいえない。まもなくホンダから登場する電気自動車「Honda e」はモーターをリヤに搭載した後輪駆動を選んでいる。その理由はフロントの切れ角を大きくとるためというロジックによるのだが、電動化が進んでいくとパッケージングに対する考え方は根本的に変わる。そのときでも前輪駆動が主流のままなのか、それはまったくわからない。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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