【今さら聞けないタイヤの基礎知識】オールシーズンタイヤならドコでもOKじゃない! スタッドレスとの違いをヨコハマタイヤが徹底解説 (2/2ページ)

ドライ路面の性能も一般的なサマータイヤと同等の性能をもつ

──では、スタッドレスタイヤとオールシーズンタイヤの得意なところ、苦手なところを解説いただけますでしょうか?

 オールシーズンタイヤは、用途に合っている人にはすごくおすすめです。たとえば年間に数日しか雪が降らなくて、スタッドレスタイヤに替えるまででもないな、と思っている方。そういう方にはオールシーズンタイヤを年間通じて装着していれば、交換せずに走れますので、走行面での安心感に加え、交換する手間が省ける、タイヤの保管場所が必要ないという点がメリットかと思います。

 一方で、オールシーズンタイヤをおすすめできる方が限定されてしまうところがデメリットと考えております。やはり降雪地域の方には氷の上で確かな性能が得られるスタッドレスタイヤをお求めいただく必要がありますから。

──対して、スタッドレスタイヤは降雪地域など雪道をはじめ凍結路面などで有利ということですが、そんな冬性能に特化したスタッドレスタイヤのデメリットはあるのでしょうか? たとえば、ズボラな方ですと、春先など完全に雪解けの季節でもサマータイヤに交換せずに走り続けている方もいらっしゃいます。そのような方への注意喚起も含め、解説いただきたいのですが……。

 ひとつは氷の上でしっかりとしたグリップ性能を発揮できるよう、ゴムを柔らかくて氷に密着するようなものを選んでいますので、ドライ路面を走り続けていると摩耗が早まってしまいます。決して安い商品ではありませんので、交換せずに走り続けると、せっかくのスタッドレスタイヤを傷めてしまい、もったいないですね。

──スタッドレスタイヤは雪道をメインに走っていると摩耗は少ないため、溝がなくなるまで何シーズンも使い続けてしまう方も多いかと思います。実際、溝が残っていることは前提として、何シーズンくらいは安心して性能を享受できるのでしょうか?

 もちろん、交換の際に残り溝を確認していただくのは前提ですね。また、何シーズン使えるかという点においては、ゴムの性能がきちんと持続していることを弊社で検証した結果では、正しい環境で保管されていた場合は、新品時から4年後でも同等の性能を発揮できるということが確認できました。ゴムがきちんと路面に密着することが氷に効くポイントですので、そのゴムの性能がきちんと維持できている限りは使っていただいて大丈夫です。日光に当たってひび割れたり、もちろん溝が減っていればもっと早く交換しなければなりませんが。

──どうしても長く使い続けたいと思う人も多いでしょうから、きちんと正しい保管方法を守っていただきたいですね。ところでオールシーズンタイヤはもちろん夏のドライ路面なども走行するわけですが、サマータイヤと比較して、摩耗具合などは遜色ないのでしょうか?

 弊社の一般的なサマータイヤと同等レベルとなっています。ウエット性能、濡れた路面での制動距離もスタンダードなサマータイヤと同等の性能を持っていますので、通年で気にせず走行していただけます。

──このほかにもオールシーズンタイヤならではの特徴はどんなことがあるのでしょうか?

 高速道路において、冬タイヤ規制というのがあります。その場合はスタッドレスタイヤを装着していなければ走行できないのですが、オールシーズンタイヤを装着していれば、冬タイヤ規制の区間も走行することが可能です。ただし、チェーン規制となってしまうと、スタッドレスタイヤもオールシーズンタイヤも、チェーンを装着しなければなりません。

──昨シーズンは高速道路の入口で、冬タイヤ規制に適合したタイヤを装着しているか確認する、検問のようなシーンに遭遇しました。

 年々厳しくなっているのかもしれませんね。近年オールシーズンタイヤが増えている背景には、突然の大雪で事故が増加していることもあります。欧州では、冬期はスノーフレークマークが与えられていないタイヤでは走行してはいけないというような地域もあるほどですし。

──たしかに、安全に関わることですからこういった規制なども大事ですね。そうなると、将来的に今のサマータイヤからオールシーズンタイヤが標準化になる、というようなこともあり得るのでしょうか?

 可能性としてはあり得ますね。欧州では新車にオールシーズンタイヤが純正装着されるというケースが増えてきています。それに倣っていくとなれば、日本市場でも純正採用されることは増えていく可能性はありますね。もちろん、スポーツカーなど特化したクルマは別ですが。日本ではまだオールシーズンタイヤというものが一般に普及しているとは思っていませんので、これからですね。

──横浜ゴムさんとしてオールシーズンタイヤの開発で、とくに苦労された点はどこですか?

 やはり溝を確保しながら接地面も確保するというバランスがこだわったポイントです。弊社の商品は雪道性能に強いオールシーズンタイヤとして訴求しています。昔からのイメージで中途半端では? とか本当に効果はあるの? といった声も寄せられていましたので、まずは雪でしっかりと走れるということをお伝えすることが日本市場で販売する上で重要かと思っております。

 サマータイヤの性能を重視するのか、スタッドレスタイヤの性能を重視するのか、それは各社の考え方もあります。弊社としては、万が一の際により危険な雪道での性能を重視しています。ですので、安心してウインタードライブも楽しんでほしいですね

──オールシーズンタイヤとスタッドレスタイヤは、似ているようで異なるタイヤだということがあらためて認識できました。オールシーズンタイヤは万能ではないので、自身の冬の行動パターンできちんと正しいタイヤを選んでほしいですね。今日はお忙しいところありがとうございました。


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