市販車との共通部品はドアノブとエンブレムだけ! 燃費はリッター2km! スーパーGTマシン「GRスープラ」の秘密 (1/3ページ)

日本が誇るGTマシンの秘密に迫る!

 クルマ好きの読者諸兄なら「スーパーGT」をご存じのことだろう。日本発の国際シリーズで、国内最大級の人気レースに発展しているが、そのなかで、世界的にも注目を集めているのが最高峰のGT500クラスだ。

 GT500クラスには現在、国内の3メーカーが参戦しており、トヨタが「GRスープラGT500」、ニッサンが「GT-R NISMO GT500」、ホンダが「NSX-GT」を投入。激しい開発競争を展開しているが、“世界最速のGTマシン”と謳われるGT500マシンには、どのような秘密が隠されているのか?

 ここでは開幕戦の富士でトップ5を独占したほか、第5戦の富士で2勝目を獲得するなど、デビューイヤーながら抜群のパフォーマンスを発揮するトヨタの主力モデル、GRスープラGT500をクローズアップしながら、GT500マシンの特徴を紹介したい。

 マシンを解説してくれたのは、トヨタカスタマイジング&ディベロップメント・TRD本部で、車両開発部の部長を務める湯浅和基さん。第5戦が行われた富士で、GRスープラGT500の開発責任者を直撃したので、以下、Q&A形式でその模様をお伝えしたい。

──2020年のスーパーGTでトヨタのニューマシン「GRスープラGT500」がデビューしましたが、そもそも市販モデルと共通した箇所はあるんでしょうか?

湯浅氏:市販モデルとの共通点はほとんどないんですよ。強いて言えば、共通パーツはドアノブと前後のトヨタエンブレムになりますね。

──えっ? それだけですか?

湯浅氏:そもそもスーパーGTのGT500クラスはドイツのDTMと共通の車両規定、“クラス1規定”に合わせて作っているので、市販モデルとはまったくの別物です。カーボンモノコックを含めて共通部品も多くなっているので、GT500は専用のレーシングカーになっています。

──でも、見た目は市販のGRスープラに似ているような気がしますが……。

湯浅氏:全長や全幅などサイズが決まっているので、それに合わせていくと市販モデルの部品はほとんど使えない。もともとクラス1規定は、DTMのセダンをベースにしたマシンに合わせて考えられているので難しい部分もあります。正面や後ろはGRスープラのシルエットに見えるけれど、サイドビューなんかは昨年までの“レクサスLC GT500”に似ている……とも言われることがあります。

──なるほど。GRスープラをベースにしているといっても、中身は純粋なレーシングカーで、イメージ的にはプロトタイプのレーシングカーに近いわけですね。そうであれば、むしろ、GRスープラGT500は昨年までのレクサスLC GT500に近いのでしょうか?

湯浅氏:いえ、そうでもないんですよね。2020年のレギュレーションは“クラス1規定+α”になっていて、エンジンと空力の部分で、スーパーGTが独自に開発できる要素がある。それも共通部品が多いので、それと合わせるために昨年までのレクサスLC GT500とはまた別の開発を行ってきました。

──ちなみにGT500のニューマシンは、どのくらい開発期間を要するものなんですか?

湯浅氏:ボディデータの解析を含めると、GRスープラGT500は2年前に開発をスタートしています。風洞モデルを作って、本来なら1年前の2019年4月に走行テストをする予定でしたが、共通部品の到着遅れもあって、走り始めたのは2019年の8月からになりました。


廣本 泉 HIROMOTO IZUMI

JMS(日本モータースポーツ記者会)会員

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スバル・フォレスター
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