バカっ速だけどジェントル! BMWに魔法をかけた「アルピナ」って何? (2/2ページ)

乗り心地やスムースな加速感といったジェントルぶりが魅力

 アルピナの真髄は中身にある。BMW車のシャシー、エンジンなどに特別な手を加える、プレミアムブランドのさらに上をいくエクスクルーシブな自動車メーカーとしてのこだわりはハンパではなく、S58型と呼ばれるBMW M3用を用いたパワーユニットは、3リッター直6ビターボ(ツインターボ)、最高出力462馬力/5500-7000rpm、700N・m/2500-4500rpmというM3用をさらにトルクアップしたスーパーなスペックの持ち主だ。

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 ここで、BMW Mシリーズとの違いが気になるかもしれないが、それはアルピナB3を走らせればすぐにわかる。特に乗り心地に関しては、スパルタンなM3とは別物。20インチタイヤとは思えないフラットで快適感極まる、まさに、アルピナマジックと称される乗り心地の良さにまずは驚かされる。

 さらに、アルピナ製パワーユニットは、低回転域から分厚いトルクが湧き出て、ほんの少しアクセルを開けるだけで、静かに、そしてクルマの流れを大きくリードする加速力が得られる。ただし、この時点では、462馬力の獰猛さなど、みじんも感じられないジェントルさを保ったままだ。スパルタンなM3では、これほどまでの快適性は望めないと断言していいだろう。

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 日本のアルピナのスタッフによれば、アルピナ独自のエンジンチューニング、マネージメントがもたらす本領は、日本の高速道路ではそのごく一端を示すに過ぎないという。本国でB3を走らせた経験では、200km/hオーバーのクルーズを素晴らしく静かに、快適にこなし、”時間を買う”という概念を思いしらせてくれるそうだが、日本の高速道路の制限速度域では、アルピナB3の持つ性能のほんの入り口だけを堪能することになるのかもしれない。

 実際に日本の公道、高速道路で試乗した筆者の経験からすれば、それでもビターボと呼ばれるパワーユニットの素晴らしさは体感可能だ。シルキーシックスと呼ぶべき、リミットに向かってシルクのような感触でよどみなく回転をあげる、機械の雑味皆無の感動的と言っていいウルトラスムースさ、パワーの劇的な盛り上がりの序章程度は、体感できるはずである。試乗中、高速道路の合流で、不用意にアクセルをやや深く踏み込んだ際の、まるで巨大な塊に蹴飛ばされるような、強烈すぎる怒涛の加速力には、思わず血の気が引いたほどだったのである。

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 その後、ショートサーキットで走らせる機会も得たのだが、雨のなか、コーナーでの地を這うようなしなやかなフットワークマナー、精密なステアリングレスポンスの良さ、xDrive(4WD)による圧巻の接地性と安定感の高さを痛感できた。ビターボに組み合わされたアルピナ独自の8速ATの制御も極めてスポーティなもので、恐ろしいほど速く、そして想像以上の速さでコーナーを駆け抜けられるリムジンといった印象を持てた。しかも、文句なしの快適感を伴ったままというあたりが、アルピナの真骨頂ではないか。乗り終えたあとには、人生最高のレストランの最高のテーブルで、最高の料理とワインを、最高のサービスとともに味わったあとのような余韻、満足感に浸ることができたのだ。

 アルピナB3のベース価格は1229万円。試乗した濃緑のB3はアルピナストライプなど多くのオプション込みで1500万円に達していたが、ベース価格だけを見れば、ベース車両のBMW M340i x Driveの987万円と大きく変わらないプライシングと言ってもいいかもしれない。

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 1200~1500万円も出せば、いかにもなスポーツカーを手に入れることもできる。そこを、ジェントル(に見える)なセダン、またはツーリングと呼ばれるステーションワゴンのB3とするあたりが、年間に全モデルで300台にすぎない希少な日本向けのアルピナを選択する、感動の極みを享受できる”選ばれしユーザー”のアルピナオーナーの見識というべきではないか。

 1986年、ボクがBMW325iに乗っていた時代、やはりアルピナに憧れ、元カノのつながりで3シリーズのアルピナを売却予定の四国のオーナーを紹介してもらい、羽田空港から飛行機に乗ることになったのだが、当日、大雪で四国行きの飛行機が欠航。羽田空港の出発ロビーでなんとなく、「縁がないかもしれない」とあきらめたことがあったのだが、まだ若造のボクには早すぎたとも言えるし、もしかして手に入れることができたら、クルマ人生が大きく変わっていたかもしれないと、今では思っている。

名前:
青山尚暉
肩書き:
2022-2023日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
現在の愛車:
フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアント
趣味:
スニーカー、バッグ、帽子の蒐集、車内の計測
好きな有名人:
Yuming

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