なんと150万円以上の値下げも! テスラモデル3の「激安化」と国産メーカーへの「不安」 (2/2ページ)

日本メーカーのEVに対するアプローチに見える不安

 日本の自動車メーカーは、リチウムイオンバッテリーの次とされる全個体電池の実用化に期待をかけている。だが、既存のリチウムイオンバッテリーはすでに原価を下げながら品質を保つ大量生産段階に入っている。一方で日本の自動車メーカーは、リチウムイオンバッテリーの仕入れ先確保に遅れ、Honda eは1000台、マツダMX-30は500台、レクサスUX300eはわずか135台という規模しか国内で販売できず、プラグインハイブリッド車のトヨタRAV4PHVも、昨年は受注停止に追いやられた。

 全個体電池への期待はいいが、それを2020年代半ば前後に導入できても、原価は高いはずだ。リチウムイオンバッテリーも、三菱i-MiEVや日産リーフの発売から10年を経てようやく値下げの話になっている。全個体電池の実用化がいずれできたとしても、原価が下がるまでにそれから10年かかるとすれば、普及段階となるのは2035年以降だろう。

 その時代には、欧米のいくつかの自動車メーカーはEVメーカーとなる宣言をしており、さまざまな車種がEVとして販売されたとき、日本車は原価の高い全個体電池に固執するあまり、たとえ性能は高くても高級車しかEVにできないという事態に陥りかねない懸念がある。

 EVを単なるエンジン車やハイブリッド車の代替としか着想できない思考が、技術や高性能化を追い、大量生産と原価低減への視野が行き届かない日本の自動車メーカーの限界をあらわにしている。


御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
日産サクラ
趣味
乗馬、読書
好きな有名人
池波正太郎、山本周五郎、柳家小三治

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