リモート商談! さらにはAI化へ! 「新車セールスマン」という仕事は消えるのか (2/2ページ)

日本は新車販売におけるデジタル化が遅れている

 正月2日や3日から初売りセールを行っていたメーカー系ディーラーも多かったが、2021年では正月3日までに初売りをスタートさせたのはスズキ系と一部日産系ディーラーだけであった。初売りを三が日から始めなくなった理由はいろいろあるようだが、そもそも正月三が日以内から店を開ける時には、休日出勤扱いで店舗スタッフのうち半数出勤とするケースが多かったのだが、それも“働き手不足”によりできなくなったという話も聞いている(ほかには、メーカーからの出向者がいるので、メーカーの休日カレンダーに合わせたためといった理由や、紅白の横断幕を貼ったりした初売りはブランドイメージになじまないといった理由もあったと聞いている)。

 さらに、“働き方改革”でセールスマンの休みはいまもなお増え続けている。バブルのころは週に1日休むのも大変だったが、いまや週休2日は当たり前で、週休3日実施までが話に挙がっているところもあると聞く。さらに、有給消化率の向上のために、定期的に半ば強制的に有給を取らされるといった話も聞いている。いまは新型コロナウイルス感染予防もあって、時短営業を続けているディーラーも多いが、それ以前から午後7時までには完全閉店するディーラーがほとんどであった。

 ベテランセールスマンからは、「最初は、いつ新車を売っていいのかわかりませんでしたが、最近は限られた時間内に効率的に新車を販売することにも慣れてきました」との話も聞いている。いまではアポなしで店頭へ行くと、担当セールスマンの休みが多くてなかなか会えないので、「いつなら店にいるの?」と聞いてディーラーへ出かける“馴染み客”も多いようだ。

 いまでは、バブルのころの新車販売台数の半分ほどまでに市場が縮小しているので、夜遅くまで店を開けたとしてもお客がたくさんくるわけでもないし、年中無休を貫くのは光熱費などとの“費用対効果”も良くないとの理由も、時短営業や定休日を設ける背景にはあるようだ。それでも筆者の生活圏内にある、某新車ディーラーはゴールデンウイーク期間中でも全日営業していて驚かされた。

 今後はリモート商談の普及が期待されているが、リモート商談先進国のアメリカでは間もなく商談の相手がAIになるのではないかといわれている。長い目で見れば、リモート商談が増えて行けば、店舗の多くは点検・整備のみを請け負うサービスステーション化していくのではないかともいわれている。アメリカの新車ディーラーはすでにそのような動きが見えてきており、週末のディーラーは。新車販売目的で訪れるお客が少ないどころか、セールスマン自体も少なくなってきているようにみえる(一部がリモート商談専属部隊となっている)。中国でもリモート化は進んでおり、一般的な通販サイトで新車を買うことも可能になっていると聞いている。

 世の中のデジタル化により、欲しいクルマを扱うディーラーへ出向き、セールスマンと膝を突き合わせることだけが購入手段の選択肢とはならず、将来的にはAIを相手にしたリモート商談が定番となっていくことになるだろう。

 日々の勤務時間や休暇の多さを見れば、“就労環境の改善”が進んでいるように見える新車販売の現場であるが、世界的に見れば、労働集約型産業からの脱却が進んでいることもまた事実。日本はかなりデジタル化が遅れているし(とくに新車販売に関しては)、さまざまな“細かい決まり事”もあるので、アメリカや中国ほどスピーディに新車販売の世界のデジタル化には時間がかかりそうだが、長い目で見れば“新車販売セールスマン”が、“過去にあった仕事”になってしまうことは十分ありえる話ともいえる。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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