ヒット車の「車名」にあやかって大誤算! じつは難しい「派生車」と失敗した3台 (1/2ページ)

ベースモデルの成功に乗っかったハズだったのに……

 いつの時代にも派生車は存在する。直近ではノートオーラだ。背景には新型ノートのバリエーションがあった。

 新型ノートはハイブリッドのe-POWERのみで、ノーマルエンジンを削った。「先代型も売れ筋はe-POWERだった」というのが廃止の理由だが、実際には25〜30%はノーマルエンジンが売れていた。この不足分を補うことも視野に入れ、派生車のノートオーラを加えた。先代型のノーマルエンジン車は価格が160万円前後、ノートオーラは260万円を超えるから、同等に売れると儲かる。オイシイ話だ。

 このように派生車は「ベース車の名声にあやかって儲けたい」という狙いで設定されることが多い。ノートオーラもいきなり「オーラ」で登場したら、ユーザーはどういうクルマなのか悩むが、ノートオーラならわかりやすい。

 ただし派生車は、コケることも多いのだ。その例を挙げてみよう。

1)トヨタ・マークXジオ(2007年)

 最初に見た瞬間、「こりゃダメだ!」と確信したのがマークXジオだ。3列目のシートを使うとミニバン、畳むとワゴン、間仕切りを入れるとセダンというコンセプトだったが理解しにくい。3列目は狭く価格は割高だ。

 ところが1カ月の販売目標は4000台と強気で、1カ月後には8000台を受注したと発表された。

「んなバカなっ、ウソだろっ!」。この仕事をやめようかと思った。2007年10月には、車名別の登録台数ランキングでも、マークXがカローラシリーズ、ヴィッツ、フィットに続く4位に入ったのだ。

 それまではマークXセダンだけで30位前後だったから、マークXジオの追加で急上昇したことになる。

 その後も11月は好調を保ったが、12月以降は急降下した。「やっぱり売れなかった、俺は間違っていなかった。この仕事を続けよう」と思い、今に至っている。


渡辺陽一郎 WATANABE YOICHIRO

カーライフ・ジャーナリスト/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ポロ(2010年式)
趣味
13歳まで住んでいた関内駅近くの4階建てアパートでロケが行われた映画を集めること(夜霧よ今夜も有難う、霧笛が俺を呼んでいるなど)
好きな有名人
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