「スライドドア」+「低床フロア」だけじゃ足りない! 子どもも高齢者もあらゆる家族が満足するクルマをズバリ挙げる (2/2ページ)

リヤドア開口部が広くて低床ならシニアも乗り降りしやすい

 走行中について言えば、後席と運転席に距離のあるクルマだと寂しがり屋の子供はグズるかも知れない。そんなケースでは、後席分割ロングスライド機構を持つ日産ルークスなどが威力を発揮する。

 何と、後席は5:5分割で320mmものスライド量を持ち、助手席側の後席をグーンと前にスライドさせることが可能で、運転席の親の手の届きやすい着座位置になるというわけだ。同時に、前席から後席にアクセスしやすいメリットや、後席の子供をケアしやすいように助手席の背もたれを肩口のレバーで前に倒すこともできるから、まさに子育てカーとしての機能は文句なしと言っていい。この機能は、ベビーケアモードとしてセレナにも用意されている。やるじゃん、日産。

 子供がある程度大きく、車内でドライブに飽きないようにするためにおやつを与えられるようになると(飲食)、今度は食べこぼしが気になってくる。シートを汚されてはたまりません。そこで注目したいのが、汚れに強く掃除も楽々な撥水シートを持つクルマだ。その撥水シートを備えたクルマはアウトドア向きということでSUVに多いのだが、スライドドアを備えた日産ルークス、三菱ekクロススペース、スズキ・スペーシアギア、ダイハツ・ウエイクなどにも撥水シートが用意されている。日産セレナでは、オプションとして防水シートを選択することもできるのだ。

 また、後席の子供の熱中症対策として、直射日光が当たらないようなリヤドアのロールブラインドを利用するのもいい。こちらも主にミニバン、スズキ・ソリオのような2列シートのプチバン、スーパーハイト系軽自動車に装備されている。

 ここまでは、主に乗降性、車内での子供のケアを中心に話を進めてきたが、ベビーカーを利用している場合は、その収納性も忘れてはいけない。一般的なA型ベビーカーを例に挙げると、畳んだ時の全長は約1000mm。ミニバン、プチバン、スーパーハイト系軽自動車のラゲッジスペース(後席/3列目席使用時)に縦に収めることは不可能で、ミニバンなら3列目席を格納して横、または斜めに積むことになる。

 近所のドライブではたとえ斜め積みしても問題ないのだが、ドライブ旅行でほかに荷物があるケースでは、斜め積みはよろしくない。理由は、ほかの荷物が積み込みにくくなるからで、ベビーカー、荷物の両方にキズなどのダメージを与える可能性がある。よって、ベビーカーは真横に押し込むのが、もっとも適した積み方となる(ペットキャリーも同様)。

 となると、ラゲッジスペースの幅は1000mmが基準になる。両側スライドドアを持つ子育て世代にぴったりなコンパクトなプチバンでもスズキ・ソリオなら1020mm、日産セレナのようなMクラスボックス型ミニバンともなれば1200mm前後はあるから、ベビーカーの横積みは楽勝となる。これは意外に見落としやすい部分なので、クルマの購入時には使っているベビーカーを畳んだ時の全長を計っておくか、実際に縦積み可能かどうか積んでみることだ。

 と、そんな子育て世代にやさしくぴったりなクルマは、なんとシニアにも最適な1台となる。高全高、低床の両側スライドドア車であれば、シニアも乗降時の足運びが楽で、大きくかがまずに快適に乗り降りすることが可能になる。

 さらに、車内に乗り込んでから、お尻を後席に落とす場面、逆に降車時に立ち上がる場面では、後席は後ろ寄りにあるより比較的前にセットしていたほうがスライドドアの開口部に近く、Bピラーのアシストグリップ、前席の肩口、ヘッドレストに手をかけやすい乗降時のメリットがある。そのため、後席(ミニバンの2列目席)のシートスライド機構は、シニアの乗降にも大いに役に立つのである。

 つまり、そうした子育て世代にうれしいクルマ、機能は、シニアへのやさしさとしても見事に合致するというわけだ。子育て真っ盛りにしてシニアな両親がいるような家庭にふさわしいクルマを選ぶとすれば、上記のような1台で事足りることになる。


青山尚暉 AOYAMA NAOKI

2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアント
趣味
スニーカー、バッグ、帽子の蒐集、車内の計測
好きな有名人
Yuming

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