ガヤルドで花開くまで「スモールランボルギーニ」は苦難の連続! V8搭載の「不遇」の3台とは (2/2ページ)

コンパクトモデルへの執念はガヤルドで花開きウルスで結実する

 ロゼッティは、ウラッコをベースによりスタイリッシュな2シーターのデザインとメカニズムの見直しを、それぞれガンディーニと、新たにチーフ・エンジニアの職に就いたフランコ・バラルディーニに依頼。それがシルエットだ。

 エンジンはそれまでのP300用のそれから260馬力へと10馬力のエクストラを与えたにすぎないが、シャシーのチューニングは広範囲に及んでいる。スプリングやダンパーを始めとするセッティングは大幅に見直され、より走りを意識したものとなっている。

 前後のホイールは、のちにランボルギーニの象徴ともなるリボルバータイプ。これはそもそもベルトーネが、1974年にコンセプトカーのブラーボで採用したデザインである。1976年のジュネーブ・ショーで発表されたシルエットだったが、こちらもセールス面では満足のいく結果を残すことはできなかった。全生産台数は53台。

 当時のランボルギーニの生産規模で、この約4年間で記録された数字を多いとみるか少ないとみるかは、人それぞれの判断になるだろう。ちなみにシルエットが誕生したとき、すでに12気筒モデルではあのカウンタックが世に送り出されていたのである。

 だが、ランボルギーニのV型8気筒モデルへの執念は、それでも終わることはなかった。すでにこの頃、イタリア政府の管理下にあったランボルギーニは、シルエットをフルモデルチェンジした新型のV型8気筒ミッドシップ2シーターであるジャルパの生産に乗り出していたのだ。

 新たな親会社としてランボルギーニを手中に収めたのは、フランスのパトリック・ミムラン。正確にはここから社名は、ヌオーヴァ・アウトモビリ・フェルッチオ・ランボルギーニ社となる。

 ジャルパがワールドプレミアされたのは、1981年のジュネーブ・ショーでのことだった。基本的なボディスタイルはシルエットのそれにほぼ等しいが、スリーサイズは、全長×全幅×全高で4330×1880×1140mmと、全幅方向での拡大が特に目立つ。新たなデザインを採用したのは前後のバンパー、オーバーフェンダー、エンジンフード、左右のエアインテーク、そしてフロントスポイラーといったところで、ホイールのデザインもシルエットのリボルバータイプからディッシュタイプへと改められている。

 実際に見るジャルパのエクステリアは、シルエッット、さらにウラッコまでさかのぼるのならば、たしかに1980年代の作と納得させるだけの魅力を持つ、端正で現代的な姿にまとめられたといえるだろう。

 インテリアもインパネのデザインを一新し、さらに機能性は高まっている。ステアリングはウラッコ、シルエットと引き継がれたコーンデザインのものではなく、安全性を考慮したクラッシュパッド付きのものに改良。シートもリクライニング可能なものとなり、機能性や快適性も大きく高められたと考えられる。

 ちなみにこれら内外観の改良は、もちろんすべてベルトーネによるもの。ジャルパの生産は最終的には1988年まで続けられるが、1984年のジュネーブ・ショーではシリーズ2と呼ばれるマイナーチェンジ版も登場している。エアインテークがボディと同色にペイントされたほか、エアコンやパワーウインドウが標準装備化されたのも、このマイナーチェンジでは大きな話題だった。

 ウラッコ時代から変わらず、ミッドに横置き搭載されるV型8気筒エンジンの排気量は3.5リッター仕様。4基のウェーバー製キャブレターを装備して得られた最高出力は255馬力と、シルエットからは若干低下してしまったが、この時代はどのスーパースポーツメーカーも、排出ガス規制とパワーの両立に悩んだ時代である。

 ランボルギーニとて、その例外ではなかったのだ。それでもトルクは大幅に高まり、扱いやすさはシルエットから格段に良化した。組み合わせられるミッションはこれまでどおり5速MT。最高速は248km/hと当時発表されていた。

 1988年までに、トータルで410台を販売したジャルパ。その生産が中止されると、ランボルギーニからはしばらくV型12気筒モデル以外のプロダクトは誕生しなくなる。長い時間を費やし、2003年に復活を果たした「スモール・ランボルギーニ」は、あのガヤルドだった。

 ガヤルド、そしてその後継車であるウラカンが、SSUV(スーパースポーツSUV)のウルスとともに現在のランボルギーニのセールスで大きな力となっていることは誰もが知るところ。ようやくフェルッチオの悲願が実ったといったところだろうか。ランボルギーニの未来は明るい。


山崎元裕 YAMAZAKI MOTOHIRO

AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員 /WCOTY(世界カーオブザイヤー)選考委員/ボッシュ・CDR(クラッシュ・データー・リトリーバル)

愛車
フォルクスワーゲン・ポロ
趣味
突然思いついて出かける「乗り鉄」
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