1+1=3にも4にもなってる! 自社だけじゃ不可能だった「コラボ」で「圧倒的な価値」を手に入れたクルマ (2/2ページ)

ライバル車同士は切磋琢磨によって磨かれた

 このように異なるメーカーのコラボではないが、最近でいえばシトロエン・ベルランゴとプジョー・リフターの姉妹車が、明確にキャラ設定を変えているという話を紹介したい。ご存じのように、両社はメカニズムの大半を共有するが、ベルランゴがファミリーミニバン的なキャラクターとなっているのに対して、リフターはスライドドアのSUVと呼びたくなるようなセッティングとメカニズムを与えられている。

 具体的には、リフターの最低地上高はベルランゴ比で20mmアップの180mmに高められ、さらにマッドモードなどオフロードを意識したドライブモードを持ち、下り坂で速度を一定に保つヒルディセントコントロールも備わっている。その実力は本物で、過去に特設オフロードコースを走らせたときには、ほかのプジョーのSUVモデルを凌駕する走破性を見せてくれた。

 駆動方式こそFFだが、ミニバンとSUVのクロスオーバーといったキャラに仕上げられているのだ。もし、これがリフターだけが売られているのであれば、ここまで割り切ったセッティングにはできなかっただろう。ベルランゴという兄弟がいるからこそ生まれることのできた奇跡の存在がプジョー・リフターといえるのではないだろうか。

 同じくプラットフォームを共有することで生まれたのが、ハイパフォーマンスSUVの極みといえる「ランボルギーニ・ウルス」と、プレミアムSUVの頂点といえる「ベントレー・ベンテイガ」だ。同じプラットフォームからはアウディQ7、ポルシェ・カイエン、フォルクスワーゲン・トゥアレグといったモデルも誕生しているが、ウルスは650馬力の4リッターV8ツインターボを、ベンテイガは635馬力の6リッターW12ツインターボを積むことで、そうした兄弟車と明確に差別化を図っている。

 それにしても、ウルスはSUVながら間違いなくランボルギーニと感じられる薄いボディのスーパーカー的なスタイリングとなっている。一方、ベンテイガはベントレーらしい重厚なシルエットとなっているのは、見てのとおり。

 基本設計は共通とは思えない、この2台の仕上がりは、まさしくデザイン力の奇跡といえるのではないだろうか。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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