猫も杓子もSUVに乗る時代! レーシングドライバーを納得させた「本当に走りのいい」SUVの実名とは (2/2ページ)

輸入車ばかりと思いきや国産車も大健闘していた

 BMWはX5やX3を早い時期から投入してマーケットでは大きな成功を納めたが、走りの良さを完成良域にまで高めることができたのはX2の登場まで待たなければならなかった。X5は初期からBMWらしい走行性能を示していたが、軽快なハンドリングを活かせたのはX2が初めてと言える。今ではX3も進化したが、意外にもX4やX6といった走りに特化したはずのクーペSUVの方がコントロール限界を掴みにくく、BMWといえどもクロスオーバーSUVの走りを仕上げるのは苦労しているようだった。

 メルセデス・ベンツはGLA、現行GクラスのAMGモデルなどがSUVらしからぬ運動性能的に優れた走りを実現し、さすが! と思わせられる。しかし、GLEやGLCなど重量が大きく、豪華な装備のモデルでは他社と同じように苦労していると感じさせられる。

 では国産車はどうか。国産も現在人気を博しているのはほとんどがSUVと言っても過言ではない。「走りのいいSUV」は国産モデルにあるのか。

 最新モデルでもっとも走りの良さを印象付けられたのは三菱エクリプスクロスPHEVだった。前後2モーターでS-AWCの電子制御ロジックが走りを決定づけるエクリプスクロスPHEVは、驚いたことにサーキットで抜群の運動性能を示したのである。まさにランエボ(ランサーエボリューション)の再来と思わせるような「意のままのコントロール性」を手に入れていた。

 それが悪路でも発揮でき、ハンドリング面の仕上がりの良さは「流石」と思わせるレベルにあった。ただ、装着タイヤがエコタイヤでグリップレベルが低すぎ、そこは改善する必要がある。そして、新型アウトランダーPHEVはそうした部分もさらに磨き上げられ、「SUVでも走りを諦めない」姿勢を明確にしていると言える。後輪にもブレーキAYCを作動させ、高い旋回性を実現しただけでなく、とくにフラットダートでの意のままに扱える感覚、コントロールの自在度は「スポーツカーか!?」と思わせるほどの高いレベルに仕上がっている。

 マツダはTVCMで盛んに「走りの退屈なクルマは作らない」と「Be a driver宣言」をしている。実際、CX-5などの走りは安定していて安心感は高いのだが、運転していて楽しいクルマだとはまったく思えない。ステアリングやエンジンなどレスポンスが鈍く、アジリティが低い。小気味良さとは無縁のような面白みのないクルマになってしまっている。実用性の高さ、コストパフォーマンスの良さ、デザインの秀逸さがあるだけに、走りを磨き上げないのはもったいない限りだ。

 日産、スバル、トヨタ、ホンダのクロスオーバーSUVも、こうしたハイレベルな走りを実現したモデルと比べたら標準的だ。今後は走りの良さも磨き上げたSUVの登場が期待されるが、電動化の影響で当面は期待できないだろう。それだけに現行モデルで走りのいいモデルを認識しておくことは重要なのだ。


中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
愛車
マツダCX-5 AWD
趣味
海外巡り
好きな有名人
クリント・イーストウッド、ニキ・ラウダ

新着情報