【試乗】単なる高級SUVにあらず! レクサスLXは市街地からガチオフロードまで圧倒的な使い勝手だった (3/3ページ)

ガチのオフロードを難なくこなす走破性の高さ!

 さていよいよ本来の実力が発揮されるオフロードコースを走る。今回、富士スピードウェイのP10(旧バンク奥)のさらに上方で、山肌を削ってさまざまな路面を創設し特別なコースとしてテストコースが造られていた。じつはこのコース、今回の試乗の為だけのものではなく、今後レクサスLX購入者、あるいはオフロード系SUVを購入したユーザーがこの施設を 使用してオフロード走行体験ができる施設に発展して行くそのベースになる場所なのだという。スポーツカーを買ったらサーキットを走りたくなるように、オフロード性能の高いクルマを買えばオフロード走行を試してみたくなるだろう。また、いざという時のためにこうしたオフロードコースでの走行経験を積んでおくことも極めて重要であり有効となる。現状はまだ仮設のコース設定ということだが、それでも難易度は非常に高く設定されている。

 まず最大斜度が27°から30°近くとなるような、ぬかるみの路面を登って行く。 通常モードでも登れるが、アプローチアングルを最大値にするために走行モードをオールテレインモードに設定すると全自動でライドハイトが一番高くなる。そして全方位が視認できるマルチビューモニターカメラが起動して常に路面の前後左右がモニターに映し出されるので、視界の悪い大きな段差路面も安心して進めることが出来た。実際25°の斜面登坂では車体が登り始めると前方には空しか見えず、進行方向の路面状況が目視できないだが、このマルチビューモニターを使えば、まるでエンジンルームが透明になったかのように前左右タイヤの両サイド及び車のフロア下の状態までも視認することができる非常に便利な装備と言える。

 ステアリング機構の見直しでキックバック入力が非常に少なく、こうした悪路でも快適性を損なわずに走れるのはさすがだ。またモーグル路面は左右に大きく路面がイレギュラーで突出した部分もあり、その高低差が1m近くにも及ぶが、そんな路面でも難なく走破していけるのは、車輪アールティキュレーションが非常に大きく取られていることの証と言える。また万が一、対角線上の車輪が接地性を失ってもブレーキLSDが作動してスタックすることはない。オールテレインモードにしていればそれらは常に最大値まで稼働制御し、この程度の困難な悪路でも難なくクリアすることができる。ちなみにセンターデフおよび前後のデファレンシャルはマニュアルで機械的にロックすることもできる。

 今回のテストコース は普通のSUVでは走れないようなレベルだったが 、それでも機械的LSDロックを使わなくても何事でもないかのように走破できてしまう踏破性を見せた。 最大斜度30度の急な下り、しかも路面がぬかるんでいて滑りながら降りるような場面。そこではクロウルコントロールを起動し、時速1キロ〜5キロまでの間でアクセルもブレーキも操作しなくてもクルマがすべてを電子コントロールし、ドライバーはステアリング操作だけに集中して行くということが可能だ。4輪個別ブレーキをかけることによりフットブレーキでは引き出せないような高度な制御が可能となり、こういう悪コンディションの下り坂でも安心して降りられることができた。同じような場面の登り区間でもクロールコントロールで登って行けばアクセルを踏み増す必要もなく設定速度で登っていける。そんな場面でもエンジンは結構な回転数でパワーを引き出し、力不足を感じることはない。最後に岩石を積み上げたような段差路を試す。タイヤサイドをぶつけたらバーストしてしまいそうな尖った岩石が多数露出した部分もマルチビューモニターを使って乗り越える形で踏破して行くのだ。

 このオフロードグレードは18インチのタイヤが標準装着されていて、外見的にも見るからに悪路に強そうな出で立ちとなっていた。たとえ20あるいは22インチのタイヤを装着していても、おそらくこの程度の悪路は問題なく走破できるという。22インチはタイヤ外径が大きくなることで最低地上高は若干高まるので、なおさら路面の凹凸への踏破力は高まると言えるのだ。ただしタイヤが路面をグリップすることが最低必要条件で、アイスバーンや雪道路面などをノーマルタイヤで走破することはできない。いくらLX600オフロードであっても雪道を走るときには雪道専用タイヤを装着することは必須である。

 今回この3グレードのLX600新型を試乗して、共通しているのはその高い静粛性と安定性そして高い踏破性である。LX600の主なターゲットユーザーは中東の砂漠地帯であったり、オーストラリアの岩石路あるいはシベリアのツンドラ地方などの自然環境の厳しい地域で、そんな環境下でもレクサスらしい快適さを求めるユーザーに適合させている。そうした地域的な要求条件を長年の実績で理解しているレクサスの開発グループだからこそ、このように仕上げることができたのだといえるだろう。ランドクルーザーと同じプラットフォームとパワートレインであるが細かなチューニングの差や装備で差別化を図ることで地域毎のユーザー満足度も高度に得られるに違いない。日本国内のユーザーにとってはランドクルーザーの方がよりマッチするとかもしれないが、レクサスとしてのこの快適性を日常的な移動で求めたり、悪路を走ることはないようなユーザーでもその高い安心感と「いざ」というときの踏破性を生命の保障として所有していたいと言うようなユーザーは数多い。

 ただ納期については 現状でも4年前後の納車期間が必要となることは否めないという。生産工場はランドクルーザーと同じであるということもあって ランドクルーザー以上に納期がかかることが 現在危惧される唯一の課題といえるだろう。


中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
愛車
マツダCX-5 AWD
趣味
海外巡り
好きな有名人
クリント・イーストウッド、ニキ・ラウダ

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