「単なる実験」に終わる懸念は拭えない! 世界初の太陽光発電だけで運用するEVカーシェアリングに残る疑問 (2/2ページ)

運用が軌道に乗ったときに充電時間をどう確保するかが鍵だ

 この事業に限らず、太陽光発電や風力発電を利用した再生可能エネルギーの普及が、国内外を問わず大きな期待を持たれている。それらを積極活用することに異議を唱えるつもりはない。だが、依存しすぎることへの懸念もある。

 すでに気候変動は現実の問題として起きており、各地で予測不能な災害が頻発している。したがって、いま、日差しがよかったり、適当な風が吹いたりしている地域での再生可能エネルギー利用が、この先、5年10年継続できる保証はない。

 また、一般的にカーシェアリングは昼夜を問わず需要があるので、稼働率が高くなり、運用が軌道に乗れば乗るほど、充電する時間に制約を受ける可能性も出てくる。その対応には、近隣に別のカーシェアリング拠点があるなどの助けが必要で、たとえばパーク24では、拠点数の多さによる利便性の確保を試行錯誤している。

 机上の想定では、理想的なEVカーシェアリングの構想だが、実証実験するのであれば、カーシェアリングの知見が豊富な企業などとの連携が欠かせないのではないか。

 物を設置すれば課題が解決する時代ではない。物は不可欠だが、それをいかに運用するかという手段が問われる時代である。

 また、実証実験の段階から実際に課金する段階になったら、いくらくらいで運用できるのか、充電時間をいかに確保するのか、そうした現場や現実の視野をもって取り組まないと、単に「試しました」というだけで終わってしまいかねない懸念が残る。


御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
日産サクラ
趣味
乗馬、読書
好きな有名人
池波正太郎、山本周五郎、柳家小三治

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