ホンダのVTECが有名だが日本初は三菱だった! 「可変バルブ機構」のメカニズムと搭載車 (2/2ページ)

ホンダは高性能モデルに幅広く採用

 この方式を発展させたのが、同じく三菱が1984年に実用化したシリウスDASH(Dual Action Super Head)3×2方式の可変バルブ機構だ。ターボ過給と組み合わせたSOHC3バルブ方式(吸気2/排気1)のエンジンで、低回転時には吸気1/排気1で運転し、高回転時に休止させていたもう1つの吸気バルブを作動させ、吸排気流の高効率化、充填効率の向上を図ることで高出力化を図った可変バルブ機構である。搭載モデルはスタリオン、ギャランΣ(E15A系)だったが、4バルブDOHCターボ全盛の時期で、市場で強く注目されることはなかった。

 低速域と高速域で、理想とするバルブ開閉タイミングに異なりがあることに着目し、低速域と高速域でバルブ開閉タイミングを変えられるようにした位相可変型バルブタイミング方式が、1986年に日産が実用化したNVCS(Nissan Valve timing Control System)だった。3リッターV6DOHCのVG30DE(F31レパード)に採用。量産エンジンの高性能化を急テンポで展開しつつあった日産が、自然吸気3リッターエンジンの最高レベルを目指して商品化したものだった。

 高出力化に対し、バルブ開閉タイミングのみではなく、バルブリフト量も可変にしたシステムが1989年にホンダがリリースしたVTEC(Variable valve Timing and lift Electronic Control)だ。最適なバルブリフト量も低速域と高速域では異なり、ひとつのカム山で対応できる回転ゾーンに限界があることから、ホンダは低速時(浅く開く)と高速時(深く開く)でカム山を切り替えれば、幅広いエンジン回転域で高出力性(高トルク性)が得られると考えた。このエンジンがB16A型でDA型インテグラに搭載され、1595ccの排気量から160馬力を発生。自然吸気エンジンながらリッター100馬力を達成する驚異の仕様だった。

 その後VTECエンジンは、ホンダ高性能戦略のイメージメカニズムとして、高性能モデルに幅広く採用されていくことになり、可変バルブタイミングの特徴を生かし、省燃費性能を謳う環境型エンジンでも応用されていくことにな。

 なお、三菱のMIVEC(Mitsubishi Intelligent & innovative Valve timing & lift Electronic Control)も、システム制御に異なりはあるものの基本的にはVTECと同じ考え方で、1992年にランサー/ミラージュ(CB4A系)に搭載されて商品化されている。

 ホンダVTEC、三菱MIVECとほぼ同時代に、パワー競争を繰り広げる1.6リッタークラスのスポーツエンジン用としてトヨタが実用化したメカニズムがVVT(Variable Valve Timing)だった。この方式はバルブリフトの可変はなく、吸気バルブの開閉タイミングのみを制御する方式で、5バルブの4A-Gと組み合わせリッター100馬力を実現していた。

 この方式は順次進化を遂げ、1999年にカム位相の連続可変機構と吸排気バルブのリフト切り替えを組み合わせたVVTL-i(Variable Valve Timing and Lift intelligent)方式としてセリカ(T230系)用の1.8リッター2ZZ-GEで採用され190馬力の最高出力を発生した。

 ちなみに、過渡期にあるトヨタのVVT-i(Variable Valve Timing intelligent=電制可変バルブタイミング機構)と同じ考え方のシステムが、BMWのVANOS(Variable Nockenwellen Steuerung)で、当初は吸気カムシャフトのみに作用する通称「シングルVANOS」方式だったが、排気カムシャフトも可変タイミングとした「ダブルVANOS」へと進化し、さらにバルブリフト量可変式のバルブトロニック方式と組み合わせられることになるのだが、吸入空気量が少ない時にスロットルバルブが障害となってポンピングロスが発生することを重要視したBMWは、スロットルバルブを廃した方式を採用して世の中を驚かせた。

 シリンダー内に導き入れる混合気の吸気タイミング、シリンダー外に排出する燃焼ガスの排気タイミング、そして吸排気の量を決めるバルブリフト量。4サイクルエンジンの出力特性は、カムシャフトの動きと連動した吸排気バルブの動き方に影響される要素が非常に大きかった。可変バルブ機構は、この特徴に着目したもので、初期のものはわずかなバルブタイミングの変化だったものが、バルブタイミングは連続可変、バルブリフト量も回転域に応じて最適な仕様を使い分けるまでに進化を果たしてきた。可変バルブ機構は、4バルブDOHC、過給機と並ぶ高性能化のカギを握るエンジンメカニズムと言えるだろう。


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