知らないとヤバい今どきの自動車用語! 清水和夫が「MaaS」を猿でもわかるように解説する (2/2ページ)

自動車業界も積極的に参入しつつある

■トヨタがこだわるMaaSとCASE

 自動車業界に押し寄せる変革の波はMaaSだけではない。もっと大きな変化の波はCASEである。それではCASEとはいったい何を意味しているのだろうか。

 そこでCASEとは何かを考えてみる。まずCはコネクト、Aはオートノマス(自動運転)、Sはサービス、Eは電動化を示している。このCASEという言葉は、メルセデス・ベンツのディエター・チェッツェ会長が2016年のパリのモーターショーで放った言葉である。CASEを構成するそれぞれの要素技術は日本でも馴染みはあるが、統合したことが新しい。

 もう少しわかりやすく言うと、今までの自動車は人がハンドルを持って運転し、化石燃料を燃やし、クルマを所有してきた。ところが、CASE革命ではAIが運転し、電気で走り、所有から離することになる。100年続いた三大原則が変わるということは大胆なルールチェンジなのだ。トヨタの豊田章男社長も「CASEは100年に1度の革命」と述べている。

 トヨタはつながるクルマを目指して、コネクトを推進する「コネクティッド・カンパニー」を2016年に設立した。さらに2018年には従来のコネクティッド部とITS企画部を統合し、さらにMaaS部門も組織化されている。これを見てもトヨタが本気でMaaSやCASEに取り組んでいることが理解できるだろう。

 トヨタは2018年1月に開催されたラスベガスのCES(家電ショー)で「e-Palette」という自動運転のコンセプトカーを発表し、無人でも走れるモビリティの可能性を提案した。無人車なのでロボットカーとも呼ばれるが、街のなかで場所や速度を限定すればロボットカーも実現可能だ。メルセデスも2015年のフランクフルト・モーターショーで「メルセデス社はモビリティ・プロバイダーとなる」とコミットしている。自動車メーカーから脱却し、作って売るだけではなく、移動サービスを全体で最適化する事業に乗り出している。これからは自動車メーカーという呼び方が古くなりそうだ。

■ITや通信企業との連携

 2018年、秋を感じさせる10月のパリモーターショーは、多くの新型EV(電気自動車)で賑わっていた。その最中に「トヨタとソフトバンクが提携」というニュースを知った。多くのメディアはIT業界と自動車業界の巨人が手を組んだことがサプライズ・ニュースとなって伝わっていた。記者発表では、二社の共同事業会社「モネ テクノロジーズ株式会社」(MONET Technologies)が誕生し、モビリティのサービスを目指すというのが、新事業の骨子だった。

 この提携はトヨタの豊田章男社長からのラブコールがきっかけだったが、ソフトバンクの孫正義さんもこのラブコールは喜んで受け入れた。両社は自動車と通信ITという異なる世界で成長してきた企業だが、最近は自動車とITは急接近している。自動運転でもIT企業のサポートは必要だからだ。

■MaaSは白熱ナウ

 MaaSは昨今、世界的に議論が白熱しているテーマだが、日本ではモノとしてのクルマと、コトとしてのサービスが別のテーブルで議論されることが多い。モノとコトは同じテーブルの上に乗せて考えることが重要なのである。

 スイス・ジュネーブショーで何度か訪れたことがあるローザンヌ地方。ここでは地域交通が住民の足として十分に機能し、トラムや鉄道などの多様なモビリティをひとつのアプリで利用することができる。ヘルシンキで始まったMaaSがスイスでも実装されている。ここでは各種交通機関の連携がうまくいっており、非常に利便性が高いことが分かった。

 このように、クルマは楽しい走りを求めるだけでなく、移動の自由、移動の多様性がこれからの時代の要請なのである。その意味ではトヨタやメルセデスはモビリティのサービスを提供する企業に変身する覚悟を決めている。


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