【試乗】遅れてきた大本命! シビックe:HEVのスポーティな走りが衝撃 (2/3ページ)

大トルクを発生するモーターの加速は強烈

 ステアリング右横のエンジンスタートスイッチボタンを押してシステムを起動させる。その場合、直ちにエンジンは始動せずシフトセレクターでDレンジをセレクトすれば、まずはEVモーターでEVとして走り始める。バッテリーの充電がフルにされている状態でもリチウムイオンバッテリーの総容量は1.1kWhと小さく、EVとしての航続距離は最大でも1.5kmほど。また、路面の斜度、上り勾配やエアコン要求、アクセルの踏み加減、車速などによってエンジンは直ちに発電機として始動し、シリーズハイブリッドとして走行を続けることになる。

 エンジンの始動はジェネレーターモーターを回転させることによって行い、従ってセルモーターは装備されていない。また、エアコンや燃料ポンプなどもすべて電動化されているので、エンジンにはファンベルトがついていないのも特徴だ。シビックとしては2リッターという大きな排気量を持つエンジンだが、始動時の振動はほぼ感じられない。振動は容量の大きな液体封入エンジンマウントにより完全に抑え込まれている。むしろ1.5リッターのガソリンエンジン搭載車よりも振動が少なく静かに感じられるほどのNVH性能を与えられていることがわかった。

 駆動モーターは最大トルクが315Nmと大きく、これは1.5リッターのガソリンターボの240Nmよりも遥かに強力で、発進から加速まで極めて力強くスムースに走らせることができる。ちなみにゼロ発進でアクセル全開加速を試みれば、この315Nmが瞬時に発揮され左側前輪が一瞬空転するほどの力強いトルクのピックアップを見せた。だが、トルクステアをうまく制御していてハンドルを取られるようなことはもちろんない。

 そのまま加速を続けてくと、最高速度としてはVmax190km/hが可能で、その走行域まですべてを駆動モーターがカバーしているのだという。ちなみにeCVTは従来のCVTのようにギヤを変速変化させるのではなく、駆動トルクや回転数を制御することでトランスミッションとしての性能を持たせている。もちろんファイナルギヤがトランスファーのデファレンシャルで最終減速比として備わっていて、その加減により最高速度や加速性能は左右されるが、現状の仕様は極めて力強い加速と欧州市場を見込んだ190km/hという高速域をカバーできる最適なギヤ比が与えられていると言える。

 巡航モードに入るとエンジンと駆動輪の間に仕込まれたクラッチが繋がり、その場合はエンジンでの走行ドライブモードとなる。ただ、エンジンドライブモードでは駆動用モーターもジェネレーターモーターもともに電気的に切断されて走行や充放電に影響を与えない形の制御となるが、実際のところ実走行場面においては、このエンジンドライブの走行パターンというのはほぼ起こりえないということも覚えておく必要がある。

 巡航状態でもバッテリーの充電要求があればエンジンが稼働してジェネレーターを回す。エンジンとジェネレーターは機械的に直結状態にあり、いつでもすぐに発電できるようにスタンバイされているので、効率よく充電制御することができるわけだ。

 また、アクセルを踏み込めば直ちに駆動モーターがメインの駆動装置として役割を引き出し、エンジンは発電に徹する。一方、アクセルを離してエンジンブレーキを使用するような場面では、ジェネレーターがエネルギー回生を行い減速Gを発生させる。この時にもエンジンは回転しているが、燃料カットが行われエンジンブレーキとして作動させられていることになる。シリーズ方式のハイブリッドと言えるが、トヨタのシリーズパラレルハイブリッドのように、エンジンとモーターが互いにアシストしあうというような走行パターンはもち得ていない。

 つまり、エンジンだけでパワーを出して車両を加速するような場面はない。2リッター直噴ガソリンエンジンが発生する最大出力は141馬力で最大トルクは182Nmであり、パワーやトルクどちらをとっても駆動用電動モーターの方が優っているので、駆動力が必要な場面ではいつでも瞬時に電動モーターが主役となるのである。


中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
愛車
マツダCX-5 AWD
趣味
海外巡り
好きな有名人
クリント・イーストウッド、ニキ・ラウダ

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