【試乗】遅れてきた大本命! シビックe:HEVのスポーティな走りが衝撃 (3/3ページ)

ハンドリング特性は驚くほどスポーティ

 減速の大部分はジェネレーターの回生により減速Gが制御される。ブレーキペダル踏力を加減することで減速回生強度が変化し、減速Gをドライバーがコントロールすることができる。ただ、最後停止する部分においては、ブレーキ踏力でディスクブレーキのブレーキパッドを機械的につかみ、摩擦ブレーキとして停止する仕組みをとっている。この減速回生からディスクブレーキに切り替わる部分において、ときおり制動Gが変化したり制動距離が伸びてしまうなどの事例も他社の例では報告されていたが、今回のe:HEVではその制御が極めてスムースかつナチュラルに仕上げられ、ブレーキはリニアで扱いやすい特性となっていた。

 ワインディング路に入ってくるとハンドリングの良さにも感心させられる。今回装着されているミシュランパイロットスポーツ4のグリップはもちろんのこと、ケーシング剛性の縦横のバランスに優れ、タイヤが路面を掴む感覚がドライバーに非常にダイレクトに伝わってくる一方、垂直荷重によるハーシュはうまく抑えられていて乗り心地は快適だ。このタイヤの好特性も影響してか全体的な乗り味は非常にマイルドで快適性が高いが、それでいてグリップに優れライントレース性の高いハンドリングを示す。

 また、大パワーのトルクを瞬時にアクセルで制御できるモーター特性とのマッチングにも優れていて、ガソリンエンジン搭載車で感じるようなもどかしさやドライブ感覚とずれるような不満を一切感じさせない。

 ハイブリッドモデルでありながら、むしろハイパワーでスポーティなハンドリングとしてより高い次元で完成させられていることがよくわかるのである。エコカーと言うよりもむしろスポーツサルーンというにふさわしい走りと動力性能の実力を見せつけられた気がする。

 後席に乗っても快適性が高いことが感じられた。これは小さいながらもバッテリーユニットをリヤアクスルの後席下に搭載することで重心が下がり、それによりクルマの安定性が増して後席の座り心地や居心地を良くしていると言える。また、遮音に対してもより進んだ仕様となっていて、ガソリンエンジン搭載車よりもはるかに静かで上質な快適空間となっているのがわかった。

 e:HEVではECON(エコ)、ノーマル、スポーツ、そしてインディビデュアルという4つのドライブモードの切り替えが可能で、エコモードではスロットルレスポンスを抑え燃費を稼ぎ、またステアリングを軽くして操舵力の変化を抑えて誰でも乗りやすい走り味としている。スタンダードモードではよりモーターの出力を引き出すことが可能で、ベテランドライバーやハイパワー車から乗り換えるドライバーでも違和感なく扱えるような仕上がりと言える。スポーツモードを選択するとよりアクセルレスポンスがさらにシャープとなり、またエンジンの回転数が高まって発電量を高次元に維持するしくみが採用されている。

 全開加速を続ければエンジンが高回転で回されるがマニュアルシフト車のようなステップ比が設定されていて車速の高まりにおいてエンジン回転数が4段階に変化するようなトリックも採用されている。

 さらに、スピーカーからよりスポーティなエンジン音を乗員に聞かせ、まるでスポーツカーに乗っているかのようなサウンドを聴きながらスポーティドライブを楽しむことも可能となっている。これらはインディビディアル設定でエンジンのパワー、サウンド、ステアリングの重さなどを自分の好みに設定することができ、それはいったん停止してイグニッションオフにしても再始動時に維持されるので、利便性も高まっていると言えるだろう。

 さて、今回ハイブリッドとなったこの新型シビック。その走りはハイブリッドと思えぬほどにスポーティでハンドリング特性にも優れている。

 また、クルマの質感も高くシビックシリーズの最高級モデルとして位置するにふさわしい走りと乗り味を与えられている。この2年間、コロナ禍の厳しい制限のなかで、開発チームはこのシビックハイブリッドが日本だけでなく欧州や北米でも販売されることを見込み、「欧州でのテスト走行を多く行った」という。そうした努力がこの乗り味と走りに現れているのはユーザーにとって大きな喜びとなりえるだろう。従来、欧州車の乗り味を欲すれば、BMWやメルセデスなどの欧州ブランド車に乗りかえるしか手がなかったが、シビックというブランドのなかで欧州モデルとしての実力を味わえるのもこのシビックハイブリッドの新しい魅力になっている。

 WLTCモード燃費は24.2km/Lと極めて優秀だが、走りを楽しみすぎればもちろん燃費は悪化してしまう。ただ、常に燃費コンシャスな生活を送るよりも、時にクルマを走らせる喜び、コーナーを駆け抜ける喜びを味わうこともクルマとともに人生を送るなかで重要な時間であるということを考えれば、クルマ好きにとってシビックe:HEVは、燃費走行もスポーツ走行もこなす万能なモデルとして非常に魅力的なクルマになっていると言えるのだ。


中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
愛車
マツダCX-5 AWD
趣味
海外巡り
好きな有名人
クリント・イーストウッド、ニキ・ラウダ

新着情報