すでに受注停止の大人気フェアレディZはATのデキがよすぎる! 悩ましいトランスミッションどっちを選ぶか問題を徹底検証 (2/2ページ)

新開発のミッションは期待大!

 そしてここでの本題となる、よくぞ残してくれた!! と歓迎・感謝すべき6速MTはリファインされたキャリーオーバー版。一方、ATはジヤトコ製の新開発9速AT(日産の国内向けモデル初搭載)。これは北米仕様のフルサイズピックアップトラックなどにも使われているものだが、設計当初から、新型フェアレディZへの搭載を想定していたらしい、大トルクに対応する多段ATである。

 ちなみに価格は6速MTと9速ATは同価格。ベースグレードのフェアレディZがともに524.15万円。本革シートやBOSEサウンドシステムなどが付くラグジュアリーバージョンと言えるVersion STもともに646.25万円。最上級のフェアレディZ Poroto Specもまた、ともに696.63万円だ。シフターの見た目は、6速MTは先代と大きく変わっていないものの、9速ATのほうはアリアの電制シフターを思わせるマウス的デザインとなる。新時代のスポーツカーを想わせるコクピットの新鮮味ならATのほうだろうか。

 なお、3ペダルとなる6速MTにはこれまで通り、シフトダウンの際に自動的にエンジン回転数を合わせてくれるシンクロレブコントロール(ON/OFF可)が備わっているため、誰もが小気味のいいスポーティな走行を楽しめるだろう(さらに9速ATとともにローンチコントロールも完備)。

 シフトロッドを最適化したという6速MTの操作性は、ショートストロークながら下段ではやや渋く、全開加速でのシフトアップ時には405馬力、475Nmの大パワー、大トルクゆえに変速ショックは避けられない(それが豪快なドライブフィールと捉えられなくもないが)。その点、MTより3段も多い!! クロスレシオの9速ATはDCT(2ペダルMT)を思わせる変速のダイレクト感、変速速度の速さが美点。加速時を含めたスムースさ、切れ味でも上まわることになるだろう。合わせてV6ツインターボエンジンの咆哮もより気持ちよく感じられるかも知れない。無論、休日に山道やサーキットでZの走りを楽しみ尽くした後の帰路の高速大渋滞の場面、あるいは日常のドライバビリティにおける優位性、ストレスのなさも2ペダルATならではだ。

 もっとも、MTで乗れる純ガソリン車のスポーツカー、フェアレディZはこの代が最後になるはずだが、スポーツカーを楽しむためだけに新型フェアレディZを手に入れ、もう1台、気楽に乗れるクルマがあるというなら、FR、6速MTのスポーツカーは世界的にも希少だから、自身のクルマ遍歴のなかの誇れる「405馬力のマニュアルミッションに乗っていたんだぜ」という武勇伝の1台になることもまた確か。

 が、個人的な”買い”は、シニアだし、運転好きのカミサンもステアリングを握りたくなるはずなのと、本革のシート(の着座感)嫌いもあって、バージョンTの極めて出来のいい9速AT仕様が新型のマイベストZ-CARとなりそうだ……。


青山尚暉 AOYAMA NAOKI

2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアント
趣味
スニーカー、バッグ、帽子の蒐集、車内の計測
好きな有名人
Yuming

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