【試乗】最強の実用車……もあながちウソじゃない! 見て・乗って・触って「バカ売れ」確信の新型シエンタ (1/2ページ)

この記事をまとめると

■新型トヨタ・シエンタに自動車ライターの嶋田智之さんが試乗

■5ナンバーサイズを維持しながら車内スペースを有効に使用できるパッケージングが非常に優秀

■いくつかのバリエーションのあるドライブトレインを有しており走りに関しても欠点らしい欠点がない

いつの間にか気に入っちゃうスタイリング

 これは売れるだろうな、と思った。それもほぼ間違いなく、という確信めいた気持ちをともなって。フルモデルチェンジが行われて3代目となったトヨタ・シエンタは、十分にそう感じさせてくれるだけの出来映えを見せてくれるクルマだった。

 僕がそう感じた理由は、ざっくり言うなら3つある。

 ひとつめ。それはスタイリングデザインを含むクルマの基本的な成り立ちだ。先代の2代目シエンタはこうした日本のコンパクトミニバン──というかMPVというか──の基本みたいになっていた四角い箱っぽいカタチからの脱却を試みた、ちょっとクールな印象の“カッコイイ”系のスタイルをまとっていた。対して新しい3代目は、四角の角を丸めたようなカタチの穏やかな“なごみ”系のスタイル。

 イタリア車好きからは“フィアット・パンダに似てる”と言われ、フランス車好きからは“ルノー・カングーみたい”と揶揄されたりもしてるところもあり、かくいう僕も最初に写真を見たときに似たような感想が頭に浮かんだことを、まぁ否定はしない。家族や仲間に笑顔でいてもらうためにはクルマもキツイ顔より優しい表情の方が具合がいいわけで、そんなふうに似たようなところを目指したら似たようになるんじゃないかとは思うけど、でもこれはどうよ? みたいな感じで。

 ところが実車を前にしてみたら、確かに雰囲気的には同じグループにあるようには感じたものの、眺めてるうちにパンダやカングーに似てるかも……なんてことはいつの間にかちっとも気にならなくなっていて、これはこれでいいんじゃないか? と思うようになっていた。

 パンダやカングーを最初に見たときからそう感じてたのと一緒で、たぶん僕は気に入ったのだ。えらくかわいいワンコがクルマに変身するTVCMは“あざといなー”と軽く苦笑いさせられるところもあるけれど、その反面、見てると何となく気持ちがまーるくなってくるような愛玩動物っぽいところがあって、同じようにいつの間にか気に入っちゃう人、意外や多いんじゃないか? と思う。

 それに5ナンバーサイズの貴重な“小ささ”をキープしてることに、喜ばしさを感じる人も多いだろう。フロントの角が巧みに落とされてること、運転席からの視界が良好なこと、そして最小回転半径5mという小まわりの効き具合。取りまわしのよさは、かなりのもの。都市部の入り組んだところや住宅街の道の狭いところでは、これは大きな武器になる。運転に自信がない人にとっても、これはとてもありがたいはずだ。

 ふたつめ。コンパクトな車体でありながら、車内のスペースを豊かに使えること。車室内がこのサイズにしてはなかなか広いと思う。2列シートの5人乗りと3列シートの7人乗りが用意されていて、そのどちらも2列目の足もとは広々。脚を組んで座るのもラクラクだし、その気なら買い物カゴを置くことだってできる。

 こういうクルマと縁が薄いからかも知れないが、シエンタの7人乗りのシートアレンジはやっぱり秀逸だなぁ……と感心する。5:5分割の2列目シートのシートバックを倒して座面を前方に跳ね上げて、そこに同じく5:5分割の3列目シートのシートバックを倒したものを前方に押し出し、2列目シートを元に戻せば3列目シートは2列目シートの下に格納されて、見事2列シートの5人乗りへと様変わり、だ。2列目と3列目の片側を座席として使い、もう片側に長さのあるものを積む4人乗りとしても使えるし、そのあたりは使い方次第。

 スライドドアに2列目シートの跳ね上げで3列目へのエントリーもしやすい。まぁさすがに3列目は大人が長時間座り続けるにはちょっとつらいかも知れないが、これ、あるのとないのとは大違い。シートのアレンジはちょっとしたひと手間といえばそうなのだけど、操作はちっとも難しくないし、たいして力も必要としない。“もしものとき”にはめちゃめちゃ便利なのだ。

 2列シート仕様のほうにもメリットはある。6:4分割の2列目シートのシートバックをパタンと倒すだけで3列シート仕様をフラットにしたときよりも520mm長い2045mmのラゲッジスペースが生まれるし、もちろんこちらはこちらでさまざまなシートアレンジが可能だ。ライフスタイルとして7人乗ることはまずないという人にとっては、後ろの大きなスペースはさぞかし使い勝手がいいに違いない。

 ちなみに室内は全体的にシンプルなデザインで、全体的にこちらも穏やかで落ち着いた印象。

 変に高級感を出そうと足掻いたりはせず、ダッシュボードやシートなどにファブリック素材を使ったカジュアルなリビングルームのような雰囲気があることにも好感が持てた。


嶋田智之 SHIMADA TOMOYUKI

2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
2001年式アルファロメオ166/1970年式フィアット500L
趣味
クルマで走ること、本を読むこと
好きな有名人
-

新着情報