【試乗】最強の実用車……もあながちウソじゃない! 見て・乗って・触って「バカ売れ」確信の新型シエンタ (2/2ページ)

小さな実用車としては最強なのかもしれない

 そして3つめ。クルマの基本、“走ること”に関して欠点らしい欠点、不満らしい不満がなかったことだ。こうしたカテゴリーのクルマはじつにさまざまなタイプのドライバーが運転することになるわけで、平均点の高さが求められるようなところがあるが、そういう意味ではシエンタは結構いいレベルにあるといっていいだろう。

 パワートレインは1.5リッターのガソリンエンジンと、1.5リッター+ハイブリッド。基本的には前輪駆動で、ハイブリッドにのみリヤにモーターを持つ“E-Four”がラインアップされている。

 最初に乗ったのはハイブリッドの前輪駆動だったのだが、さすがにこうしたハイブリッドカー作りは手慣れてるな、という印象。エンジンが91馬力と120Nm、モーターが80馬力に141Nmで力不足はまったく感じさせず、極めて滑らかにそれを路面に伝達する。

 街なかと首都高速を少々くらいしか走れなかった試乗だったが、全体的にモーターで走る時間が長く、エンジンが始動したと思ってそのまま走ってると気づけばモーターのみに戻っていたりして、WLTCモードではリッターあたり28.2kmという燃費は実際にも結構いいんじゃないか? と予想できる。

 本線合流のときにアクセルペダルをグッと踏みしめていくとそこそこ爽快に加速してくれて、得られるスピードにも過不足はない。多少荒れた路面の上を通過しても変にバタつく粗さは感じられず乗り味は優しいし、この手のクルマとしてはステアリング操作に対する反応も適切に思えるうえに腰高感のない曲がり方も披露してくれて、乗り心地、ハンドリングともに悪くないな、と思えたものだった。

 ハイブリッドのE-Fourは街なかを5kmも走れなかったので、本来ならば語るべきじゃないとは思うのだけど、こちらはリヤに3馬力と44Nmのモーターを持つものの、加速にしてもハンドリングにしても、都内の一般道を走る限りでは体感的に前輪駆動のハイブリッドとほぼ変わらない印象だった。ただし、エネルギーモーターを見る限りでは発進時にリヤモーターが作動してることを見て取れる。そもそもシエンタのE-Eour採用の狙いは駆動のアシスト役。“もしも”の降雪などのときには助けになってくれるだろうことは十分に予想できる。

 そして、ガソリンエンジンの前輪駆動モデル、だ。120馬力と145Nmの1.5リッター直3エンジンは、10速のギヤ機構が備わるダイレクトシフトCVTと組み合わせられる。ハイブリッドに続けて乗ったあとにこちらに乗ったからということもあるが、賑やかだな、というのが第一印象。だけど、これが意外や活発によく走る。

 エンジンをガンガンまわして走る類のクルマじゃないことは百も千も承知だけど、そういう楽しさがあるし、発進加速こそハイブリッドのほうが魅力的に思えたりはするものの、ある程度速度に乗ってしまえば走りに軽快感が感じられて気持ちいい。パワーもトルクも必要十分。よくも悪くもダイレクトにしてストレート。そんな印象だった。ひと様にオススメするならハイブリッドのほうだけど、個人的には“こっちのほうが好みかも”なんて思ってしまった。

 コンパクトな車体に高い利便性、癖がなくて運転しやすくて、死角も見当たらない。さらには誰もがうっかり(?)親しみを感じさせられてしまう、穏やかでどこか愛嬌のあるルックス。ガソリンエンジンの前輪駆動は195万円から、ハイブリッドの前輪駆動は238万円から、ハイブリッドのE-Fourは257万8000円からと、それぞれ差はあるけれど、全体的に価格も競争力はあると思う。

 新しいシエンタ、もしかしたら小さな実用車として最強といえる部類のクルマなのかも知れない。


嶋田智之 SHIMADA TOMOYUKI

2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
2001年式アルファロメオ166/1970年式フィアット500L
趣味
クルマで走ること、本を読むこと
好きな有名人
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