驚異のリッター100km超え! かつてVWが開発した燃費の怪物「XL1」とは (2/2ページ)

エコカーの歴史に名を刻むフォルクスワーゲンXL1

 そして2012年2月、VWはついにXL1のシリーズ生産をスタートさせることを発表。実車は翌2013年のジュネーブショーで初公開された。搭載される800ccのディーゼルターボエンジンを始め、そのメカニズムは2011年に製作されたプロトタイプとほとんど変わるところはない。

 エレクトリックモーターのアシストを加えたシステム全体の最高出力&最大トルクは68馬力&140Nm。5.5kWhの容量を持つリチウムイオンバッテリーを搭載し、モーターのみでも50kmの走行を可能にしたほか、燃料タンク容量はわずかに10リットルという数字になっている。

 全長で3888mm、全幅と全高では1666mm、1153mmというコンパクトなサイズのXL1は、もちろん過去のプロトタイプと同様に、軽量化に関してはストイックなまでにその技術を追求したモデルだった。モノコックやすべてのボディパーツ、そしてロールバーなどはCFRPで作られており、これは通常のスチール比で20%程度の重量しか持たず、そして高い剛性と強度を持つ素材。

 ちなみにXL1のボディパネルはわずか1.2mmの厚さしかなく、795kgという車重を実現するために大きく貢献している。このうちバッテリーを含むドライブユニット全体が227kg、サスペンションなどのランニングギアが153kg、装備品が80kg、電気系統が105kgなどとフォルクスワーゲンからは発表されていたが、総重量795kgのうちスチールが使用されているのはわずか184kgにすぎないことも明らかにされた。

 実際にXL1が達成した燃費性能は0.9L/100km。CO2排出量も21g/kmと向上し、販売はユーロ市場でのみ250台の限定で行われることになった。価格は11万1000ユーロ(当時のレートで約1200万円)から。購入を希望するカスタマーには2万ユーロのデポジットが要求され、その後の抽選によってオーナーは決定したという。

 現在でもエコカーの歴史にその名を残すフォルクスワーゲンのXL1、それは未来を先取りした究極の作にほかならなかったのである。


山崎元裕 YAMAZAKI MOTOHIRO

AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員 /WCOTY(世界カーオブザイヤー)選考委員/ボッシュ・CDR(クラッシュ・データー・リトリーバル)

愛車
フォルクスワーゲン・ポロ
趣味
突然思いついて出かける「乗り鉄」
好きな有名人
蛯原友里

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