日本に入れば「軽自動車」の脅威となる可能性も! いま韓国で増加中の「軽車=キョンチャ」とは (2/2ページ)

日本の自動車市場は「じつは隙だらけ」だった

 キャスパーとともに市内で見かけたのは、ヒョンデグループ傘下起亜自動車のRAY(レイ)であった。レイは日本でいうところのスーパーハイト系軽車となり、ダイハツ・タント同様に助手席側のBピラーが存在しない。2011年デビューというから少々ご長寿モデルとなっているが、見劣りしないスタイリングも光っていた。

 ここまでなら、韓国にも軽車というのがあってここのところ盛り上がっているといった話で終わるのだが、ここから少々私見も含めた深読みをしてみたい。キャスパーは2021年にデビューしているが、昨今の原油価格高騰などによるニーズの高まりをにらんで開発されたようには見えない。そして韓国でも車両電動化というものは進んでおり、この軽車クラスでもBEV(バッテリー電気自動車)化が進んだらと考えてみた。事実レイは過去に試験的ともいえるが、BEVをラインアップしたことがあるし、キャスパーにはBEVの追加設定があるのではないかとの情報がある。

 日本の軽自動車がそうであるように、軽車でも薄利多売、つまり1台あたり利益が薄いので量販を進めなければならないが、クルマ以外でも韓国の市場規模は国土や人口の関係もあり日本の半分程度とされているので韓国国内だけではなかなか難しい話。そこで海外も……、となると隣の日本では新車販売台数の約40%が軽自動車となっているという事実がある。さらに日本での日産サクラと三菱eKクロスEV(ともに軽自動車規格BEV)の成功もあるので、BEV軽自動車として日本市場を視野に入れていてもおかしくないと筆者はソウルの街角で考えた。

 たとえば、キャスパーを日本の軽自動車規格内に収まるボディサイズ版を開発し、さらにBEVとして日本市場で販売すればかなり興味深いことになりそうだと筆者は考える。過去には初代ダイハツ・テリオスには軽自動車版としてテリオス・キッドが存在していた。ボディサイズは登録車のテリオスに対して全長で-390~470mm、全幅で-80mmとなっていた。キャスパーならば全長で-200㎜、全幅で-120mm小さくすれば、ボディサイズは日本の軽自動車サイズに収まることになる。ボディサイズの縮小(できたら)や右ハンドル化にはコストはかかるが、キャスパーのような趣味性の高いモデルならば価格転嫁の許容範囲も広くなる。

 レイは過去にすでにBEVをラインアップしていたという事実もある。しかも、韓国では新車販売ではオンライン販売が主力になろうとしているので、そのノウハウで日本でのヒョンデ・アイオニック5のようにオンライン販売に特化すれば、コスト上昇分も多少は吸収できるはずだ。事情通は「残念ながら現時点ではキャスパーもレイも物理的にも日本の軽自動車化は難しいし、そもそもヒョンデや起亜もそこまでは考えていないだろう」と話すが、ICE(内燃エンジン)を搭載する軽自動車ではとても勝ち目はないが、BEV軽自動車となればまったく勝ち目のない戦ともいえないだろう。

 サクラではユーザー層の偏りがないとはいえ、価格帯を考えれば従来の軽自動車ユーザーとは異なる層が流れているのは間違いない。オンライン販売だけと考えると、アイオニック5の販売状況も予想以上に良いとの話もある。いままでの日本での軽自動車とは異なるアプローチでキャスパーあたりが入ってくれば……、などと思わず妄想のようなことを考えてしまった。ただ、それだけ日本の新車販売市場は硬直化しており、外資から見れば参入チャンスが豊富、つまり隙間だらけとなっているともいえるのである。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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