「エモーショナル」なデザインのクラウン&プリウスがバカ売れ! でも本来は「地味」なのに売れるクルマが理想? (2/2ページ)

4代目カローラはシンプルなデザインで成功

 新型プリウスも販売にあたりメインターゲットとなるのは歴代プリウスユーザーとなるので、意外なほど年齢層の高い人中心にアプローチしているものと考えられる。ただし販売現場で話を聞くと、「シートポジションはクーペのように低いこともあり、車両見切りが難しいように見えます。2リッターベースのHEVは加速もいいので、一般的な年配のお客様へは積極的に勧めにくい」と語るセールスマンもいる。

 筆者は長い間カローラ・セダンを乗り継いできた、ある意味「保守系トヨタユーザー」となるだろう。その筆者が乗り継いできたカローラ・セダンのなかで印象深いのは、4代目70型カローラ・セダンとなる。きわめてオーソドックスな万人受けするボクシー(箱型)スタイルのセダンなのだが、なんともいえない美しい面構成なので(とくにリヤ)、ジウジアーロがデザインを担当したという都市伝説まであるほど。とにかく当時のライバル車を寄せ付けない上質感を醸し出していた。前期モデルでは当時は高級車の証ともされた丸目4灯式ヘッドライト(カローラ・セダンでは4灯式を採用するのは、国内ではこのモデルのみ)を採用するなど、見た目は普通だけどどこかひきよせられる細かい部分での魅力を持っていた。

 またドアの開閉音も当時のライバル車にはない独特の上質な音となっていた。当時我が家では1.5リッターGLという中間グレードに乗っていたのでタコメーターが未装備だったのだが、それを感じさせない質感を持たせた少々クセのある計器盤も印象的であった。乗っていた日本仕様の搭載エンジンは当時の昭和53年排気ガス規制対応タイプということもあり、とにかく非力でトルクもスカスカでけっして褒められるものではなかったが、それでも4代目カローラ・セダンは日本で大ヒット。さらに海外でも売れまくったモデルであり、バブル経済のころ(80年代後半から90年はじめ)に当時のセールスマンに話を聞くと、当時は6代目カローラ(ハイメカツインカム初搭載モデル)が大ヒットしていたのだが、「4代目はとにかく売りやすくて、その売れ行きは6代目の比ではなかった」と語ってくれた。

 令和のいま、消費者も多様化し求めるものもかなり異なっているのは確かな話。トヨタだけでなく、VW(フォルクスワーゲン)やメルセデスベンツなど長らく世界でたくさん売ってきたブランドではどこも、ユーザー層の高齢化が世界的な課題となっていると聞く(若年層は飽きているともいわれている)。

 ただエモーショナル路線だけがその解決策とは筆者は思っていない。2022暦年締め年間世界販売で、トヨタ、VWに次いで第3位となった韓国・現代(ヒョンデ)自動車グループでも状況が同じであるなか、一部車種でエッジのきいたエモーショナルなモデルを多くラインアップしているが、それでも全車がエモーショナルというわけでもない。

 量販しながら新世代のユーザーを囲い込もうとするならば、70型カローラ・セダンのような、オーソドックスでシンプルな「無機質な道具的イメージ」ながら、人の感性に自然に訴えかけるアクセントを持ったクルマ作りというものも大切だと考える。今一度4代目カローラとはどんなクルマだったのかを再認識してニューモデル開発の参考にしいてみてはいかがだろうか。

 そうはいいながらも、「平成のカローラ」といわれて大ヒットした3代目プリウスも同様なのだが、奇をてらわずに「傑作レベル」の完成度のクルマを作ると、なかなか次の新車へ乗り換えてもらえないという副作用をはらんでいることも間違いない。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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2019年式トヨタ・カローラ セダン S
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