「エンジン車は全部だめ」からの「合成燃料ならOK」へとEUが転換! エンジン車乗りには朗報だけど「合成燃料」ってそもそも何? (2/2ページ)

生産設備さえあればどこでも生産が可能

 さて、この合成燃料だが、カーボンニュートラル燃料として、4つの特徴を備えている。まず、エネルギー密度(体積あたり)が高いこと。水素と二酸化炭素を合成して作られる合成燃料だが、最終的には液体燃料となり、使い勝手は現在のガソリン、軽油と同じレベルと見られることだ。気体の水素やアンモニアを燃料とするケースはエネルギー密度が低く、航続距離が短い、頻繁な補給作業を必要とする、といったデメリット面が懸念材料となっている。

 これまでの設備が使える点も大きなメリットだ。合成燃料化によって新たなインフラを整備する必要がなく、現在のガソリンスタンドと同じ感覚で燃料を取り扱うことができることだ。

 資源国を限定しないことも大きな特徴だ。石油燃料は、埋蔵地からしか得ることができないが、水素と二酸化炭素を原材料とする合成燃料は、合成燃料の生産設備さえあれば、世界どの地域でも生産が可能。資源を持たない国や地域にとっては、こうした特徴が大きなメリットとして作用する。

 そして、環境への負荷が小さいこと。基本的に水素と二酸化炭素から作られる燃料のため、石油燃料に含まれる硫黄成分や重金属分がほとんどなく、環境に対する負荷が小さいという特徴を持っている。

 製造に関しては、水素の製造に二酸化炭素を排出しない方法が求められている。当然ながら電力を必要とするが、これまでの化石燃料に依存する発電ではなく、再生可能エネルギーによって得られた電力でなければ、合成燃料を生産する根本的な意味が失われてしまう点は注意事項だ。

 そして二酸化炭素と水素を合成してガス化し、これをFT合成によって合成粗油を作り、ここからガソリン、灯油、ジェット燃料、軽油、重油といった石油製品に当該するものを作り出していくことになる。

 ちなみに、日本はJAPAN-GTL(GTLとはGas to Liquidsの略でガスを液化する作業)というオリジナルの手法を持ち、合成燃料の生産にあたって有利な条件を備えている。生産コストがどうなるかは生産設備、生産体系にかかっているが、石油燃料のように原油産出地から購入する必要はなく、期待の持てる新燃料と言うことができるだろう。

 二酸化炭素の排出ゼロを目指し、乗り物に課せられたテーマは非常に大きいが、合成燃料という選択肢が増えたことで、新たな方向性が見えてきたことになる。まずは、石油に代わる代替燃料が、大きな経済負担を強いられることなく実現可能であることに期待したい。


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