「ハイテク」も「人のワザ」も全部載せ! トヨタの工場を見学したら「工場の中身の開発」まで圧倒的な内容だった (1/2ページ)

この記事をまとめると

■「トヨタモノづくりワークショップ2023」がメディア向けに2日間に渡って開催された

■初日は「トヨタのモノづくりのスタートアップ拠点」とされる貞宝工場の内部を公開

■貞宝工場では新製品の製造設備や型、工法などが開発され世界の工場へと設備が出荷されている

トヨタのモノづくりの最初の一歩となる重要拠点を大公開

 過日、2日間に渡ってメディア向けに開催された「トヨタモノづくりワークショップ2023」のオープニングで、新郷和晃CPO(チーフ プロダクション オフィサー)は大胆にぶち上げた。

「トヨタの持つ技とデジタル・革新技術で、工程2分の1を実現します。また、開発と生産の垣根をなくし、新しいモビリティをすばやく提供します。そして工場カーボンニュートラルや物流などモノづくりの基盤の課題解決にも取り組んでいきます」。

 最近、トヨタが使っている『クルマの未来を変えていこう!』というワードに込められているのは、クルマそのものの変革への思いだけではない。同時にクルマづくり、モノづくりも変革していくという決意と言える。

 2日間に渡ってメディア向けに開催された今回のワークショップ2023は、『人中心のモノづくりで、工場の景色を変え、モノづくりの未来を変える』をテーマにトヨタのモノづくりの継承と進化の過程、トヨタの誇る現場力と最新のモノづくりの技術がつまびらかにされる、凄まじく内容の濃いものだった。まわった3つの工場について、順に紹介していく。

 初日に訪れたのは貞宝工場。ここは『トヨタのモノづくりのスタートアップ拠点』とされる。ここで手がけられるのはクルマそのものではなく、新製品の製造設備や型、工法などで、実際、年間おそよ120、累計で4000の設備がここで開発され、出荷されているそうだ。モビリティカンパニーへと生まれ変わろうとしているトヨタにとって、ここは知恵と工夫、匠の技に革新技術とデジタルをかけあわせることで、「無から有を生み出す」クルマ事業を支える非常に重要な存在なのである。

 その象徴と言えるのが、2022年に開設された「スタートアップスタジオ」である。先人の知恵からアイディアを得て、3Dプリンター、木工、電子基盤などを、議論しながら作れる工房で形にしていくための場所だ。たとえば電気モーターや電池、高圧水素タンクといった技術は、それまでは世のなかには存在しないものであり、その開発を行ない、生産設備を作り上げなければならない。

 例として示されたのはハイブリッド車に使われる電気モーター。初代プリウスのそれは丸銅線を使ったもので、出力は30kWだった。それが4世代目プリウス用では長方形の断面を用い、サイズを半分にしながら出力を53kWに高めている。

 その試作においては、実際に銅線をいかに巻いていくかを手治具を用いて検証していったという。設計はCADなどでデジタルで行なうこともできそうだが「最初からCADでやったりせず、まずは皆で意見を出しあい、アイディアをモノとして形にする。それが良いと信じている」とのことだった。

 続いて見学したのは『匠工房』である。速くいろいろな車種の開発、そして生産体制を構築できることは、トヨタのフルラインアップを実現する重要な要素。一方で、デザイン性や空力要件などで、ボディ形状はますます複雑化している。ここでは、作りにくい複雑な形状をまず板金の匠がプレスで実際に作って検討し、それを金型の匠が高品質な量産金型に落とし込むということが行なわれていた。

 匠の技の凄まじさを、ユーザーも体験することができる。先日発表された新しいセンチュリーにオプションとして用意される匠スカッフプレート。こちらはステンレススチールの素材に木の柾目模様を施しているのだが、何とこれはプレスでは不可能ということで、匠が手作業で再現しているのだ。

 手作業で打つ回数はフロント用が5000回、リヤ用が7000回にもなるという。それだけに、ひとりの匠が1日に作業できるのは2枚までだという。筆者も試してみたが、技術も根気も求められる作業で、77万円(1台分)というオプション価格にも大いに納得させられてしまった。訊けば、実際に匠となるためには技能があるのは当然で、人間力、想像力も求められるとのこと。大いに納得である。

 匠の技に限らず、技能の継承は目下、大きなテーマとなっている。ロボットによる自動化が進むとは言っても高技能者の手作業も、自動車生産においては変わらず重要。いや、むしろ単純な作業をロボットに任せられるだけに、研磨、仕上げ、シーラーなどヒトにしかできない高技能がますます求められているとも言える。


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