華々しさはないけど内に秘めた「ホンモノ」の良さ! 売れてないけど玄人ウケする「いぶし銀カー」4台 (1/2ページ)

この記事をまとめると

■市場人気はイマイチでも玄人ウケするモデルを「いぶし銀カー」と名付けた

■所有満足度の高い「いぶし銀カー」を4台チョイスしてみた

■「いぶし銀カー」というのは自動車ファンが自由に選んで楽しむものだ

玄人ウケしそうないぶし銀な魅力を持つクルマがある

「勝ち馬に乗る」ということわざがあるが、日本の自動車市場においても「勝ち馬=売れているクルマ」というのは、ますます人気を高める傾向が強い。それは同調圧力に弱いといわれる日本人のマインドからすると、多数派に流れるほうが気が楽で正しい選択に思えるのかもしれないし、また経済合理性でいうと、新車で売れているクルマというのは中古になってもニーズがあるのでリセールバリューが高い傾向にあるというのも、売れているクルマを買うという判断につながっているのだろう。

 とはいえ、売れているクルマがいい出来映えで、売れていないモデルは失敗作なのかといえば、当然ながらそんなことはない。販売ランキングの下位に沈んでいるモデルラインアップを眺めていても、一芸に秀でたクルマがあれば、唯一無二のスタイリングを持っていると評価されるクルマもある。さらにいえば、ハイパーカーやショーファーカーのような超高価なモデルであれば台数がでないのは当たり前だ。

 ここでは大衆向けモデルとして企画されていながら、販売実績としてはイマイチかつ、しかしながら玄人ウケしそうな特徴を持つクルマを「いぶし銀カー」と名付け、独断と偏見で4台のモデルを選んでみた。

MAZDA3 ファストバック e-SKYACTIV X 2.0(6MT)

 マツダが開発した次世代ガソリンエンジン「SKYACTIV-X(スカイアクティブ・エックス)」は、独自の燃焼方式「SPCCI(Spark Controlled Compression Ignition:火花点火制御圧縮着火)」を実現することで、ガソリンエンジンのフィーリングと、ディーゼルエンジンの優れた燃費・トルク・レスポンスといった特長を融合したイノベーティブな内燃機関として、その誕生時には大いに話題となった。

 多くの自動車評論家やモータージャーナリストも「革新的なエンジン」として高く評価、電動化トレンドのアンチテーゼとしてエンジン推しの自動車ファンにとって希望の星となった……。

 しかしながら、SKYACTIV-Xはビジネス的には大成功とはいえない状況で、マツダも搭載モデルを徐々に減らしている。また、同エンジンにおいては、革新的なメカニズムながらMTとの組み合わせも可能であり、SPCCI燃焼をダイレクトに感じられるコンビネーションとして、まさにいぶし銀な魅力を持つパワートレインとして評価されている。

 そして、現在のマツダラインアップにおいてSKYACTIV-Xと6速MTの組み合わせを味わえるのは、MAZDA3ファストバックとなっている。ご存じのようにマツダはSUVモデルを中心にMTを廃止する方向で新車ラインアップを再構築しているので、マツダ車でMTを選べるのは数少なくなっているが、なかでもSKYACTIV-Xと6速MTのコンビネーションというのは貴重かつ希少。まさしく、いま買える「いぶし銀カー」の代表といえるのではないだろうか。

 そうはいっても、MAZDA3とe-SKYACTIV−X、そして6速MTのコンビネーションが設定されているのは4WDのみで、メーカー希望小売価格も386万6500円〜と気軽に手が出せる価格帯でないのも事実。

 そこで、もっと手の出しやすい価格帯の「いぶし銀カー」として注目したいのがホンダの軽ハイトワゴン「N-WGN」である。

N-WGN カスタム ターボ

 ホンダの軽自動車といえば圧倒的にN-BOXが売れているなかで、そのほかのラインアップは苦戦している。N-WGNについても軽自動車の販売ランキングでトップ10に入ることも珍しいという状況だ。しかしながら、乗ってみると「なぜ売れていないのだろう」と心底思うくらいよくできた軽ハイトワゴンと感じる。

 エンジンやプラットフォームなどに由来する基本的な走りの良さはN-BOX譲りで、むしろ全高が低く、サスペンションをしなやかにセッティングしているN-WGNのほうが上質感が味わえる。

 とくにカスタムに設定されているターボエンジン搭載グレードでは、パワートレインの余裕もあるため、高速道路を走っていると「あれ、軽自動車じゃなくてコンパクトカーじゃね?」と思ってしまうこともあるほど。先進運転支援システム「ホンダセンシング」も標準装備されているので、高速道路でのロングツーリングも楽々こなすのも魅力だ。

 使い勝手の点でも、ラゲッジスペースは広く、テールゲートを開けたときの開口部も広い。カスタムターボで178万4200円(FF)というメーカー希望小売価格を割高に感じるユーザーが一定数存在するのであろうし、数値化しづらい走りのフィーリングにお金を払うという感覚になれないのも理解できるが、もっと評価されて然るべき「いぶし銀軽カー」の代表格といえるのがN-WGNなのだ。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

愛車
スズキ・エブリイバン(DA17V・4型)/ホンダCBR1000RR-R FIREBLADE SP(SC82)
趣味
モトブログを作ること
好きな有名人
菅麻貴子(作詞家)

新着情報