タクシーから乗務員の名札が消えた! カスハラ対策もインバウンドからは「不安要素」との声 (1/2ページ)

この記事をまとめると

■2023年8月に国交省はタクシー及びバス車内の運転士の名札を廃止した

■「カスハラ(カスタマーハラスメント)」から運転士を守るための対策とされている

■タクシーの違法営業を抑止するためにはスコアリングという制度が有効といわれている

いつの間にかタクシーでは名札の提示をやめている

 2023年8月、国交省(国土交通省)はタクシー及びバス車内に掲示を義務付けていた運転士の名札を廃止した。乗客からのいわゆるカスハラ(カスタマーハラスメント)から運転士を守るためにプライバシーへ配慮するというのが理由とされている。

「カスハラ」などというと、ここ最近起こり始めたようにも見えるが、とくにタクシー運転士やタクシー会社へのハラスメント行為というものは昔からあった。人は酒に酔うと本音が出やすいこともあり、酔客があからさまにタクシー運転士を見下すということは大昔からあった。その際、暴力行為など過度なものとなった場合は遠慮なく警察に被害届を出しており、たいていはエリートサラリーマンなど社会的地位の高い人が加害者となる傾向が高かった。

 そんな酔客や、タクシーへの嫌がらせに慣れた人が行うのが、助手席前のスーパーサイン(空車などを表示する機器)に差されている乗務員証を引き抜いて持って行ってしまうという行為である(最近ならスマホでの撮影もあり)。いま主流のトヨタJPNタクシーは前席とのクリアランスも広いのでそう簡単に乗務員証まで手が届かないが、トヨタ・クラウン・コンフォートや同クラウン・セダンでは容易に手が届くので、運転士は自衛手段として助手席ヘッドレストを上げたりしていた。

 筆者が見てきた限りでは、中国やタイでは一部で「デジタル乗務員証」が導入されている。8インチぐらいの画面の隅っこに小さく表示されているので、スマホで撮影しようにも、かなり前のめりにならないと撮影できないので、その段階で警察に介入要請が可能となるだろう。紙ベースの乗務員証からデジタルへ移行しないで掲示義務を廃止するあたりは、いかにも社会のデジタル化が遅れている日本らしいともいえよう。

 この乗務員証廃止の一件は、日本人の間では乗務員のプライバシー保護という理由に関してはなんとなく理解できるが、日本を訪れるインバウンド(訪日外国人観光客)にとっては不安要素にもなりかねないと感じている。

 筆者が海外へ出かけてタクシーを利用して体験した限りでは、正規タクシー運転士が他人に車両を貸して営業運行させているときは当然乗務員証が刺さっていないので、「この運転士はもぐりだな」と思うときがあった。

 だいたいこのケースでは、深夜から早朝時間帯に車両を貸し出すことが多いようで、帰国のため早朝出発する飛行機に乗ろうとするときなどに多く経験している。この時間だと街なかを走るタクシーが少なく、やむを得ず乗ることも多かったのだ。ただし、これは少し昔の話で、いまはライドシェアやタクシーのアプリ配車サービスなどが利用できるので、こういった事例には遭遇することはなくなっている印象だ。

 タイなどではタクシーもライドシェアアプリで呼ぶのが主流となっているのだが、空港では規模の大きいタクシー乗り場から待っているタクシーに乗ることになる。整理券をプリントアウトして記されたパーキングロッドのタクシーに乗るのだが、ここまでシステム化されているのに、タクシーメーターを入れようとしない、つまり違法営業を行おうとするケースが増えているように見える。

 いま、日本ではライドシェアはリスクが高いという議論が目立つが、諸外国の一部ではライドシェアを介さずに普通にタクシーに乗ろうとすると、“明朗会計”とはならない傾向が目立ってきているのである。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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