その鋭い挙動は誰もが唸ること必至
リヤにオーバーハングされたエンジンが、ラリーでの勝利のために強化されていったことも特徴。ルノー8の高性能版ゴルディーニの1.1リッターや1.3リッター、さらには格上のルノー16の1.6リッターも積み、ワークスカーでは最終的に1.8リッターに到達した。
対するボディはコンパクトであるうえにFRP製だから、1.6リッターでも700kgぐらい。加速はエンジンによって違いはあるが、アクセルペダルを踏み込んだ瞬間の車体の反応、いわゆるツキの良さが圧倒的だ。それでいてOHVなので低中回転でも使いやすい。
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サスペンションはノーマルでは硬くはなく、フランス車らしいしっとり感が味わえる。でもそれが目的のクルマでないことは、ステアリングを切ればわかる。スパッと鋭いターンインと平行移動しているようなコーナリングは、ほとんどのクルマ好きが魅了されるはず。
ただし、右足のわずかな動きで挙動を変えようとするから、ペースを上げると気が抜けない。これはリヤサスペンションがキャンバー変化の大きなスウィングアクスルだったことも関係している。
アルピーヌもそれを感じていたのか、次世代モデルのA310のために開発し、ミッドシップのルノー5ターボにも使われたダブルウイッシュボーン式を組み込んだ仕様を、モデル末期に用意した。
いずれにしてもクラシックA110の走りには、ライトウエイト、ショートホイールベース、リヤエンジンという成り立ちが大きく関わっている。それを理由として、いまのA110は昔とは違うと指摘する人もいるだろう。
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しかし、僕が知っているクラシックA110のオーナーの多くが、いまのA110を買っていることも事実。表面的なスペックには現れない、哲学や精神のような部分は同じだと感じているのだろう。
昔は良かったとノスタルジーに浸るのもいいけれど、その世界観を忠実に再現したのがいまのA110であることも知っておいてほしい。