日本車は手堅いなんて誰がいった? 犠牲を払ってでも「攻めに攻めた」敬服必至のクルマ3台 (2/2ページ)

日本が誇るスポーツカーは当然のように燃費を度外視

筋の通った後ろ姿のため:トヨタ・ハリアー(現行)

 つづいて紹介するのは、現行モデルのトヨタ・ハリアー。フルモデルチェンジの際には、ハリアーらしいスタイリングが評価される一方で、リヤの灯火デザインについてブレーキランプとウインカーが上下に離れていることが指摘されたのは記憶に新しい。

 とくにSNSでは、「こんなデザインではブレーキランプを見ていたら、ウインカーに気付かないに決まっている」、「信号待ちで前のハリアーがウインカーを出しているけど見えなかった」といった旨の批判が多く見られた。もっとも、スタイリング優先のプレミアムSUVといえるハリアーであっても、トヨタらしい手堅さや信頼感を求めるユーザーの期待値との乖離があったゆえの批判だったのかもしれない。

 実際問題、通常の車間距離を取っていればブレーキランプとウインカーはしっかりと認識できるデザインになっている。そもそも、ブレーキランプとウインカーは並んでなくてはいけないという保安基準があるわけではない。

 さらに言えば、このモデルから北米マーケットにも投入(現地名:Venza)されたハリアーは、北米基準の広いウインカー面積を確保していたりする。むしろ視認性は向上しているとさえいえる。そうしたこともあり、現在はハリアーのウインカー問題について指摘する声も小さくなっているようだ。

 なお、筆者が取材した範囲の話をまとめると、トヨタの開発陣はハリアーのウインカー位置についてユーザーから問題視される可能性は十分に認識していた。しかしながら、刀を振り下ろしたときにアニメでよく使われるような一閃の表現をハリアーのリヤデザインに取り込みたいという狙いのほうが強く、そのためにブレーキランプとウインカーを分離させる必要があったのだという。

燃費なんて関係ねぇだったけれど:日産GT-R(R35)

 現在においても、日本を代表するハイパフォーマンスカーとしての地位を盤石のものとしている日産GT-R(R35)がデビューしたのは2007年12月のこと。それから16年、最高出力などのスペックは変われど、3.8リッターV6ツインターボ、6速DCT、トルクスプリット4WDというパワートレインの基本構成は変わっていない。

 デビュー当時でも480馬力を誇ったこのパワートレインについて、開発エンジニアの方に取材したことがある。そのとき印象に残ったのは「このクルマについて燃費は無視していますから」というものだった。

 単純に燃費が悪くてもパワーを出すという意味ではない。取材時の文脈から言い換えると、「通常の量産車においてはエンジンやオートマチックトランスミッションの制御プログラムにおいてモード燃費に適応させることを考慮するが、GT-Rにおいてはパフォーマンスやドライブフィールを優先しており、モード燃費の走行パターンを考慮していることはない」といえるだろう。

 じつは、この話を聞いたときは、数多のエピソードのひとつとして認識していた。しかし、驚いたのは2009年にGT-Rが新しいモード燃費に対応したときだ。デビュー当時は10・15モードの燃費が8.2km/Lだったのだが、JC08モードの燃費スペックは8.4km/L(同スペックの10・15モード燃費は8.3km/L)となっていた。

 一般論としてJC08モードは10・15モードよりはリアルに近い測定方法であり、燃費の数字としては悪くなる傾向にあるといわれている。しかし、GT-Rについては10・15モードよりJC08モードのほうが数字としては優れている。

 デビュー当時に「モード燃費に合わせるような開発していない」という発言は本当であった。そのことを証明する数値を見たとき、あらためてGT-Rとその開発陣をリスペクトしたことは言うまでない。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

愛車
スズキ・エブリイバン(DA17V・4型)/ホンダCBR1000RR-R FIREBLADE SP(SC82)
趣味
モトブログを作ること
好きな有名人
菅麻貴子(作詞家)

新着情報