水の上でもポルシェはポルシェ! マカンEVのシステムを搭載したボートはそこらの金満ボートとはひと味違う (2/2ページ)

ポルシェの限定車よりも希少なポルシェのボート

 前述のとおり、eBoatに搭載された電動システムはEVマカン用に開発されたもの。ですが、当然ながらポン付けというわけにはいかず「水上では車輪の速度を測定できなかったり、パーキングブレーキがなかったりするため、解決すべき課題がたくさんありました。たとえば、マカンはパーキングブレーキが作動しているときだけ充電されます。まず、これらの信号やその他の欠落している信号を生成する必要がありました」とケルナー氏。

 とはいえ、バッテリーや周辺機材を船底に配置できたことで、eBoatはこれまでのエンジン付きボートとはまったく違った安定性を得ることに成功しています。たとえば、フル加速をする際、従来のボートはノーズ(舳先)を上げて、船尾のバランスで航行するのが普通でしたが、eBoatは船底の重量物によってノーズアップすることなく、滑らかに水面をトレースしてくれるそうです。

 また、この重量バランスは旋回性能にも好影響を与えたようで、ケルナー氏によれば「旋回中のトルクコントロールを何度も修正するほど、eBoatはよく走ってくれたのです」とのこと。

 さらに、無音で加速していく感覚は新鮮で「湖の周辺にいる人々にも不快な思いはさせません」と、環境寄与の面でも優等生ぶりを発揮しているのです。

 なお、発表されているスペックは、出力が400kW程度、総容量100kWhのリチウムイオンバッテリー搭載、時速40キロで1時間程度の航行可能といった程度。新型EVマカンの電動システムを流用とあって、eBoatのシステムについて詳細は述べられていません。それでも、2024年のうちにフラウシャー社では初期ロットとして25台を販売する予定で、同社のサイトで予約を受け付けています。

 どうせ高い買い物をするなら、このeBoatのように環境とかサステナビリティといった付加価値っぽいオマケがついてくるほうが、より知的な自慢ができそうですよね。なるほど、顧客のことを知り尽くしているポルシェらしい取り組みです。


石橋 寛 ISHIBASHI HIROSHI

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