スポーツカーから実用車まで一気に世界中で広まったトランスミッション「DCT」! これまたあっという間に採用車が減っていったのはナゼ?

この記事をまとめると

■DCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)を搭載するクルマが一時期多かった

■変速時間が短く燃費もいい機構として欧州を中心に広く普及した

■日本国内ではトルクコンバーター式ATやCVTが広く採用されてそれほど広まらなかった

なぜDCTは減ってきた?

 DCTとは、デュアル・クラッチ・トランスミッションのことで、クラッチを2組もつ変速機をいう。2003年にフルモデルチェンジして5代目となった、ドイツのフォルクスワーゲン・ゴルフで採用され、以後、欧州の小型車などで広く使われるようになり、日本車にも影響を及ぼした。たとえば、日産自動車のR35GT-Rが採用している。

 DCTの機構は、手動変速機(マニュアルトランスミッション)をもとに、クラッチを2組設け、1組は奇数段、もう1組は偶数段の変速時に機能させる。

 具体的には、1速で発進したあと、2速へシフトアップするとき、1速側のクラッチを切って、2速側のクラッチをつなげば、自動変速のように滑らかな変速を行うことができ、クラッチの切り離しの切り替えを自動化したことで、これまでの自動変速機と同じ2ペダルでの運転が実現する。

 DCTの前に、1組のクラッチで、その切り替えを自動化した変速機があった。ただし、1速から2速へ切り替える際、手動変速と同じように、クラッチを切っている間を利用して2速への変速を行うため、若干の時間差が生じ、クラッチ操作を自動化しても、変速ショックのような違和感が残った。

 しかしDCTであれば、あらかじめ2速への変速をしておいて、偶数段のクラッチは切っておき、1速からのシフトアップに際して奇数段側のクラッチを切り、偶数段のクラッチをつなぐ手順となり、ほぼ時間差なく変速を終えることができる。違和感のない、自然な自動変速がかなうのだ。

 それまで、世界的に普及した自動変速機(オートマチックトランスミッション)は、手動変速機と違う歯車の機構を使い、トルクコンバーターというクラッチにかわる装置を用いてきた。

 それに対しDCTは、構造上は手動変速機そのままで、クラッチを1組追加して2つにするだけなので、大きな変更はない。なおかつ、同じ変速機で、手動も自動も実現可能になる。ことに欧州では、大衆車を中心に手動変速が大半を占め、それらをトルクコンバーター式の新たな自動変速にするより、手軽に自動変速の車種を増やすことができる。大きな投資をせず、商品性を拡充できるのだ。

 それでも、なぜ、手動変速でよかった欧州に、自動変速を波及させる必要があったのか。

 理由は、燃費の向上だ。

 トルクコンバーターを使う自動変速機より手動変速のほうが燃費に優れるとされてきたが、燃費規制(より正確にいえば、二酸化炭素=CO2排出量規制)が厳しさを増すと、DCTによる自動変速のほうが、CO2排出量を少なくできることがわかった。

 流体の滑りを利用するトルクコンバーターを使った自動変速に比べ、DCTはクラッチの断続によるので、燃費がよい。また変速しながらの加速も鋭く、運転に楽しさが増すなど、利点があり注目を集めた。しかし、すでに日米では自動変速機が多くを占め、従来型の手動変速機をDCT化する方が投資を増やすことになる。
また、トルクコンバーターを用いても、変速後に内部のクラッチを活用したロックアップ機構が広まり、ほかに、CVT(ベルト式無段変速機)の広がりもあって、国内ではDCTはそれほど波及しなかった。

 ハイブリッド車の要求が高まり、エンジンとモーターを併用する際、DCTを活用する案もあるが、モーターを2個とすることで、1つを変速に利用するほうが電動化を進めやすいなどもあり、電気自動車への移行過程で、DCTの魅力はさらに薄れてきただろう。


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御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター

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