スーパーGTの鈴鹿で表彰台独占のプレリュード! シビックと何が違うのか開発責任者とドライバーを直撃取材 (2/3ページ)

ライバルと渡り合えるバランスの取れたマシン

──ご無沙汰しております。2024年にデビューした「Honda CIVIC TYPE R-GT」でもお話を聞かせていただきましたが、それから2年後の2026年にニューマシン「Honda HRC PRELUDE-GT」がデビュー。シビック・タイプR-GTとしては活動期間が短いように思うのですが、どうして2026年からプレリュードGTにスイッチしたのでしょうか?

徃西氏:順番的にプレリュードが復活するということが先にありましたので、我々HRCとしても、プレリュードを素材にレーシングカーとして仕上げた場合、戦闘力はどうなるのか……ということを検証しました。結果としてシビック・タイプRよりも“伸びしろ”が期待できそうだったので、プレリュードのデビューイヤーに合わせてプレリュードGTを投入することを決断しました。

──なるほど。ちなみにプレリュードGTの開発はいつスタートしたんですか?

徃西氏:2024年にシビック・タイプR-GTをデビューさせたんですけど、その直後から素材としての検証を行っていました。2024年の開幕前にシビック・タイプR-GTのボディ設計を登録するんですけど、一度登録すると開発が凍結されるので大きな変更ができない。それでも、開発の凍結が解除されたとき、シビック・タイプR-GTで開発を続けるとどこまで性能が上がるのか検証する。その横にプレリュードGTを並べて検証していました。

──結果として2026年はプレリュードGTを投入されましたが、第1戦の岡山、第2戦と第4戦の富士を終えたうえでの感触はいかがでしょうか? シビックからプレリュードにスイッチしたことでよかったことはありますか?

徃西氏:2年間にわたってシビック・タイプR-GTで戦ってきましたが、いくつか課題がありました。もともとシビック・タイプRは空気抵抗(ドラッグ)が少ないという特徴があるところから開発していたので、デビュー仕様のパッケージでドラッグは低いレベルにあったんですけど、その一方でダウンフォースの絶対量は2023年まで投入していたNSX-GTより減っていました。

 プレリュードに変更する要因のひとつでもあるんですけど、シビック・タイプRのボディ形状ではどうしてもダウンフォースがバランスよく出ない。クルマの姿勢変化に対して理想的なダウンフォースの出し方があるんですけど、シビック・タイプRではそこにうまくマッチさせることに苦労していました。そこがプレリュードに変えたことでやりやすくなりました。とくにフロントのダウンフォースの出方や特性に関してはシビック・タイプRのときよりも扱いやすくなったという評価をチームやドライバーからもらっているので、プレリュードにしたことでダウンフォースの出し方がシビックよりも理想的な特性に近づきやすくなりました。

──逆にシビック・タイプRからプレリュードにベース車を変更したことで苦労したことはありますか?

徃西氏:ドラッグが少なかったシビック・タイプRと比較するとプレリュードは多くなっていますからね。そこをセットアップでバランスさせていくことが重要です。あとは、ダウンフォースは上がっているんですけど、シビック・タイプRとは基本の空力特性やバランスが変わっているので、うまく使いこなす、つまり最適なバランスを引き出すために試行錯誤しているところもありまして、第2戦までは苦労しました。それでも第3戦のマレーシア大会の中止に伴い、長いインターバルができたこともあって第4戦ではプレリュードの性能をうまく出せるようになりました。

──なるほど。ところで、GT500のエンジンは2000ccの直列4気筒直噴ターボのNRE(ニッポン・レース・エンジン)で、ホンダは「HR-420E」を採用していたと思いますが、こちらもプレリュードへの搭載と合わせて新しくしたことはあるんでしょうか?

徃西氏:2026年はエンジンの規則が大きく変わりまして、これまで年間2基のエンジンが使用できていたんですけど、2026年から1基のエンジンで1シーズンを戦うことになりました。そのため、エンジンに関しては、もともと信頼性や耐久性を確保する開発が必要になっていたんですけど、プレリュード固有で新たな開発が必要になったことはありません。確かにシビック・タイプRに対してプレリュードはシャープになりましたが、結果的に冷却系もうまく収められました。

──プレリュードになったことで、ダウンフォースが向上したということですが、そのほかに、プレリュードになったことでよかったことはありますか?

徃西氏:性能面ではありませんが、スタイリングがトヨタさんやニッサンさんのGTカーのように2ドアクーペがベースになりました。シビック・タイプRの時は5ドアハッチバックのクルマがレーシングカーに仕上げてもすごいカッコいいでしょうということがモチベーションになっていました。プレリュードはホンダの最新の2ドアクーペならではのスタイリッシュさを出せていると思うので、そこはよかったですね。

──確かに個性的なスタイリングのシビック・タイプR-GTに対して、プレリュードGTはスタイリッシュですよね。ところで、プレリュードGTはスーパーGTの開催コースでいえば、どこが得意なのでしょうか? まだ全コースを走行していませんが、手応えみたいなものはありますか?

徃西氏:そうですね。プレリュードGTはやはりホンダのサーキットということで、開発においても鈴鹿ともてぎは重視しています。このふたつのサーキットでしっかり走れるクルマを作ると、ほかのサーキットでも戦闘力が高い状態になりますからね。そういった意味では鈴鹿ともてぎでは活躍してくれるだろうと期待していますが、逆に富士に関しては苦戦するかもしれないという心配はありました。ライバルのサクセスウエイトなどいろんな影響があるにせよ、第4戦の富士で勝てたことは自信につながりました。

──プレリュードGTは富士で初優勝を獲得しましたが、いまの課題はなんでしょうか?

徃西氏:やはりタイヤの性能をいかに引き出すか……という部分が重要ですからね。タイヤをいかにうまく使いこなせるかが、今後の課題だと思います。

──先ほどライバルのGT車両、つまり、トヨタのGRスープラGT500、ニッサンのZニスモGT500と同様にクーペスタイリングのモデル……といわれていましたが、ライバル車両を見て「ここが羨ましい」と思うようなポイントはありますか?

徃西氏:羨ましい……という部分はありませんが、パッケージとしての速さに感心することはありますね。実際に36号車(au TOM’S GR Supra)は速いなぁ……と思いますし、あの速さの源はなんだろう……ということは考えます。ニッサンZニスモやプレリュードGTのファストバックスタイルに対して、GRスープラはコンパクトなキャビンのデザインエッセンスも特徴があるので、どういった効果を得られるのか想像はしますが、あくまでもクルマ全体のパッケージとして考えるので、GRスープラのバンパー形状がほしいとか、個別に羨ましく思うことはないです。

 というのも、我々もNSX、シビック・タイプR、そして今回のプレリュードと3つのベース車両を経験してきましたが、それぞれに一長一短があって、得意なところもあれば苦手な部分もありますからね。それにプレリュードは非常にバランスの取れたクルマなので、ライバル車両のあそこが羨ましい……ということはないです。

──ところで、GT500のプレリュードGTは市販モデルと共通するパーツはあるんでしょうか? ドアノブなんかは、非常にロードカーの純正パーツに似ているように見えましたが。

徃西氏:パーツ単位では共通しているものはないですね。ヘッドライトやテールランプなんかも、使えるものなら、そのまま市販パーツを使用したいところですが、スケーリングで拡大・縮小していると装着できないので専用パーツになります。ドアハンドルであっても必要最低限のドアのオープン機能を確保して、極限まで軽量化しているので、似ているけれどレース専用部品になります。

──ちなみにプレリュードGTは販売モデルではありませんが、金額を付けるとしたら、いくらになりますか?

徃西氏:部品を積み上げたらいくらになるのか計算したことはあるんですけど、かなりの金額になりますね。

──やっぱり家を買えるレベルですよね?

徃西氏:家にもいろいろとありますが、相当な家でしょうね。やはりレーシングカーの部品の素材は安いものではないですし、エンジンも熱効率のいいレーシングエンジンを使用しているので、市販モデルとは違う金額設定になると思います。

 以上、簡単にマシン開発の責任者、徃西氏のインタビューをまとめたが、ステアリングを握るドライバーはプレリュードGTに対してどのような印象を抱いているのだろうか?


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廣本 泉 HIROMOTO IZUMI

JMS(日本モータースポーツ記者会)会員

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