F1が2輪駆動なのは速すぎるから!? プロの4WD使いが語る「四輪駆動」の圧倒的優位性 (2/2ページ)

瞬時のトルク配分が電動4WD車最大の利点

 EVの登場により、従来のセンターデフを使わず、前後に独立したモーターを搭載することで、より精密なトルク制御が可能になった。

 EVの4WDシステムは、内燃機関車の4WDとは根本的に異なる。エンジンやトランスミッション、プロペラシャフトを介さず、前後輪それぞれをモーターで直接駆動できるため、メカニカルなロスが少なく、より自由度の高い制御が可能になっている。

 電動4WDのおもなメリットは、瞬時のトルク配分が可能ということ。エンジン車の4WDシステムはクラッチやデフを介してトルクを分配するが、EVでは電子制御により緻密に前後輪の駆動力を調整できる。また前後独立駆動(ツインモーター)のふたつのモーターを前後に搭載することや、4輪個別に4モーターを搭載することで、機械的なプロペラシャフトやセンターデフが不要となり、軽量化とバッテリー搭載のスペース効率の向上が果たせている。

 各輪の駆動力を個別に制御し、コーナリング時の車両姿勢を最適化する理想的なトルクベクタリング制御が可能で、旋回性能や安定性が格段に向上する。また中国・BYD社が実現した超信地(=その場での)旋回や縦列駐車での横移動など、新しい方向性制御が可能となる。

 ドライバーはハンドル操作で車両の向きを定めようとするが、4モーターでは前輪のスリップアングルを変化させるのではなく、駆動力を変化させることでヨーを引き出す。ハンドルはたんなるスイッチで、円形である必要はなくなり、スティック形状に置き換わろうとしている。ゲームコントローラーで操るような4WDが登場する時代がすぐ間近に迫っている。

講師 中谷明彦

  

 武蔵工業大学工学部機械工学科卒。大学在学中からモータースポーツ活動をスタート。以降、CARトップ編集部を経た後にジャーナリスト活動を展開し、現在に至る。1985年からプロフェッショナルレース/テストドライバーとしても活動。4WD車や電子制御による車両運動性能の解析を得意とし、三菱自動車のランサー・エボリューション(V~X)をはじめとする新車のほか、タイヤ開発などにも積極的にかかわっている

※本記事は雑誌「CARトップ2025年6月号」の記事を再構成して掲載しています


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中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2026-2027日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
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