「これ以上はもう無理だろう」ガンさんが新型シビックタイプRの峠道試乗で語った「FFスポーツ最高傑作」の限界【ガンさんこと黒沢元治のDPQ:ホンダ シビックタイプR編】

※本記事は雑誌「CARトップ2024年4月号」の記事を再構成して掲載しています

このコンセプトで行く限り限界といえる領域に達した

 今回試乗するシビックタイプR、いきなり結論から言ってしまえば、素晴らしくよく仕上げたクルマであり、チームの仕事ぶりには感動を覚えている。

 だが、一方で完璧というわけではなく課題も見えた。素晴らしいと言いつつも課題があるという、一見矛盾を感じる表現の理由も含めつつ評価をお伝えしよう。

 ワインディングで走行を開始すると、非常に高いボディ剛性が確認できた。常々述べているが、クルマのボディは人間でいう体幹に当たるもので、これが十分に高くないと設計の理想値どおりにサスペンションを動かすことができず、また走りの質感も上げることができない。

 タイプRが積む2リッターターボは最高出力330馬力、最大トルクが42.8kg‒mであり、先代モデルよりも10馬力 /1kg‒mほどスペックが向上している。パワーやトルクは数値以上に感じることができ、扱いやすさも十分。回転振動も滑らかで、音やフィーリングも素晴らしかった。相当パワフルなユニットだが、ボディ剛性はそれを受け止めるに十分なレベルに仕上がっている。

 組み合わされる6速MTにも感心させられた。ストロークはかなり短く詰められ、レバー自体の位置もステアリングからの距離がほどよく操作性に優れる。もっとも高く評価できるのはフィーリングで、剛性感を高めつつも固すぎず、ボクがこれまで最高だと考えていた初代NSXのそれと同等、もしくはやや超えたとも思えるものであった。

 ブレーキもまた素晴らしい。あくまでワインディングの評価であり、また気温の低い冬の試乗ではあるものの、ブレーキの温度変化による減速度の変化はほぼなく、耐フェード性は十分だと言えよう。先ほど気温の低い冬と述べたが、あくまで公道での評価であれば経験上外気温に関係なく、フェードが見られるクルマのブレーキは改善の余地があり、そうでないクルマは夏であってもシッカリとしたパフォーマンスを発揮する。また、ペダルのタッチ、踏み込み側や戻し側の両方のコントロール性、踏力に対する減速度のリニアさなども申し分がない。

 このように素晴らしい評価を並べたタイプRだが、冒頭に述べた課題とは何か? それは事象でいえば、アップヒルでの2速ギヤでのコーナリングの立ちあがりで、ホイールスピンが発生することである。試乗前にフロントサスがストラットであること、またタイヤが265/30R19であることを確認し、若干気になっていたのだが、これが上りコーナーでのトラクションとして現れた形だ。

 これを解消するには、加速でフロントサスが伸びた際にでも、より理想的にタイヤのトレッド面を接地させられるダブルウィッシュボーンを採用する、タイヤ幅をより太くする、よりしなやかな35扁平の18インチサイズにするなどが考えられる。もしくは4WDにする、などであろう。ある意味エンジンの進化を見れば、タイプRのコンセプトは限界にきているとも言える。

 ボクが素晴らしい仕事をした、と述べたのは、FFであることやシビックベースであることなど、与えられた枠組みのなかでは最高の仕事をしたということである。もはやこれ以上は、コンセプトを変更するしかないという領域に達しているのではないだろうか。

※本記事は雑誌「CARトップ2024年4月号」の記事を再構成して掲載しています


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