MT・AT・DCT・CVT! クルマのトランスミッションはなぜこんなに種類が必要? (2/2ページ)

DCTの登場で2ペダル化が劇的に加速していく

 そうしたネガティブ要素を払拭したのはDCT(デュアルクラッチトランスミッション)だろう。ポルシェがレーシングカー向けに開発したPDK(ポルシェ・ドッペルクップルング)がその起源とされるが、MTと同じ歯車ギヤをツインクラッチで瞬時に切り替え、MT同等の伝達効率と素早い変速レスポンスで一気にスポーツ性を高めることになった。

 ただ複雑なシステムでコストが高く、重量もかさむ。そこで乗用車用に安価で高効率なトランスミッションとしてCVT(連続可変トランスミッション)も登場する。CVTはエンジニア目線主体で効率を最優先にして作り出された。その結果、燃費やコストには優れるが運転感覚との乖離(かいり)が激しく、運転好きなユーザーからは嫌われる対象となった。

 ATにおいては、変速を制御するプログラムの重要性も認識されるようになる。たとえばDレンジに入れた状態でも、車速やアクセル開度などから走行状態を算出し、最適なギヤを選択したりロックアップを作動させたりする。その制御でもっとも優れていたのはポルシェ社が開発したティプトロニックだ。

 ティプトロニックではアクセル開度だけでなく車速や横G、ステアリングセンサーなどからもフィードバックし、たとえばコーナリング旋回中に余分な変速をしないように制御。またアクセル操作量、操作速度などで仮想キックダウンスイッチを作動するようにして、サーキット走行にも適するような制御を完成させている。DCTも同様に制御プログラムの如何で良くも悪くも評価されることになる。

 総じてドイツ車の搭載するDCTは制御に優れ、扱いやすいものが多い。メカニズムだけでなく制御方式においても特許権が存在し、各メーカーが自由にプログラムを導入できるわけではなくなってきている。

 MTは自動ブリッピング機構を備えてシフトダウンを正確に行えるようになるなど、まだまだ進化している。最新のトレンドとしてMTは7速、DCTは8速、トルコンATは10速などと多段化していて、エンジンとのマッチングやプログラミングは増々難しくなっているが、HV(ハイブリッド)やBEV、PHVなどの電動化モデルではトランスミッションをもたないなど、時代の大きな変革点にあることも間違いない。


中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
愛車
マツダCX-5 AWD
趣味
海外巡り
好きな有名人
クリント・イーストウッド、ニキ・ラウダ

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