「1番いいヤツもってきて」はちょっと待て! お金があっても「最上級グレード」がベストとは限らないクルマ4選 (1/2ページ)

最上級グレードが最善の選択かはどうかは人それぞれ

 クルマには、エントリーグレードから最上級グレードまで、さまざまな仕様が用意されている。かつて、トヨタ・クラウンのロイヤルカスタマー(ずーっとクラウンに乗り続けている上顧客)が、新車が出る前に、まだ試乗もしていないのに「いちばんいいやつを持ってこい!!」と注文し、誰よりも早く納車してもらい、自慢気に新車に乗る……なんていう話も聞かれたが、果たして「いちばんいいやつ」が最善の選択かは、人それぞれだ。

1)トヨタ・アルファード

 例えば、いま絶賛人気のトヨタ・アルファード。トヨタ最上級ミニバンであり、政治家、VIPも好んで使う1台だが「いちばんいいやつ」を頼めば、グレードはSの386万4000円からあるラインアップの頂点に位置するHYBRIDエグゼクティブラウンジ(7人乗り)、759万9000円となる。この金額をポンと出せる、VIP専用車、社用車として使う人にとってはまったく問題なしだが、もし、ファミリーユースとして購入し、使うのであれば熟慮が必要だ。

 というのは、 エグゼクティブラウンジ(7人乗り)のVIP席、特等席となる豪華極まる2列目席はキャプテンシートであると同時に、大型シートであるため、ミニバンの室内の移動を可能にする2-3列目席スルーができない仕様となる(HYBRIDは1-2列目席スルーも不可)。ファミリーで使う際に便利な、ミニバンならではの車内移動の自由度がないことになる。

 また、グレード名のとおり、2列目席にエグゼクティブを乗せることを前提とした仕様のため、助手席に座る秘書がワンタッチでシートをスライドさせられる機能など、一般ユーザーがほとんど使わないであろう部分にも、お金を払うことになるのである。

 すべての2列目席に乗車し、乗り心地やリクライニング機構などをチェックした経験からすると、ベーシックなキャプテンシートのリラックスキャプテンシートのほうがシート振動も少なく(シートの重量、重心高による)、2-3列目席スルーが可能な標準状態、シートを中寄せしたロングスライドモードなど、乗り心地の良さ、便利さでは上まわると感じることもあるほどだ。せっかくのアルファードだから、高級感あふれる2列目席が欲しい場合でも、ファミリーユースであれば、550万7000円のG  Fパッケージのエグゼクティブパワーシートで十分すぎる、と思われる。もちろん、ビジネス、VIP送迎ユースであれば「いちばんいいやつを」で問題ありませんが……。

2)マツダCX-30

 いま、勢いに乗るマツダのCX-30なども、「いちばんいいやつを」はちょっと待て!! である。というのは、CX-30には、マツダ3とともに、マツダ最新、渾身の次世代パワーユニット、ガソリンエンジンとディーゼルエンジンのいいとこ取りをしたスカイアクティブX搭載車が頂点グレードとして用意されているが、スカイアクティブXはまだ進化の余地があるパワーユニットであり、もし、「いちばんいいやつを持ってこい」で、スカイアクティブX 2.0 X Lパッケージ4WDを注文すると、価格は371万3600円と、マツダ自慢のスカイアクティブD=クリーンディーゼルエンジン仕様に対して約40万円、ガソリンエンジンのスカイアクティブGに対して約68万円も高価になる。

 それはともかく、スカイアクティブXに次世代エンジンならではの魅力を期待したとしても、燃費性能はガソリンエンジンとクリーンディーゼルエンジンの中間でしかなく、また、腰骨を立て、理想的な運転姿勢を、ふんわりと上半身を包み込むかけ心地、サポート性とともに実現した新シート(前席)も、レザーシートが標準となり、張りが強く、体重が軽いとその恩恵を得にくいところがある(体重65kgの筆者の場合)。

 よって、個人的には、今のマツダ車はCX-30に限らず、スムーズかつトルキーで、走りの質感まで上級になるスカイアクティブDのクロスシート仕様がベストと考える。であれば、XD PROACTIVEツーリングセレクションがベストチョイスではないだろうか。価格は スカイアクティブXのX PROACTIVEツーリングセレクションに対して約40万円安く手に入るのだ。さらにスカイアクティブXは基本的にハイオクガソリンを必要とする。ファミリーカーとしてはやはり軽油、レギュラーガソリンが維持費の面で嬉しいではないか。


青山尚暉 AOYAMA NAOKI

2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアント
趣味
スニーカー、バッグ、帽子の蒐集、車内の計測
好きな有名人
Yuming

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