選び方ひとつで「家計」へのダメージが変わる! 生活スタイルから考えるクルマの「パワートレイン」6つ (2/2ページ)

環境に配慮したパワートレインは発展途上な部分もある

4)プラグインハイブリッド

 続いて、ハイブリッドの進化系とも言えるプラグインハイブリッド。PHVやPHEVと呼ばれています。三菱アウトランダーPHEVや、トヨタ・プリウスPHVが代表的な国産モデルですが、じつは輸入車にもたくさんのPHVがラインアップされています。大きなメリットはハイブリッドとほぼ同じですが、それに加えて外部からの充電ができるということ。自宅のコンセントや、外出先にある充電設備を使って充電すると、ガソリンを使わずに電気のみで走れる距離が増え、アウトランダーやプリウスなら最大で60kmほど電気のみで走行可能です。

 ご近所の買い物くらいなら、こまめに充電すればずっと電気のみで済み、休日に遠出をする時にはガソリンを使って心置きなくロングドライブができるので、現在ハイブリッドに乗っていてもう少しステップアップしたい人や、EVに興味があるけどまだ航続距離に不安が残る人など、EVに移行する手前のチョイスとしてぴったりだと思います。デメリットは使用面ではとくにありませんが、車両価格がまだ割高に感じられるかもしれません。自宅に充電設備を設置する工事費などもかかるので、初期費用は多く見積もっておくと良さそうです。

5)電気自動車

 次に、Honda eの登場などでますます選択肢が増えたEV。すべてを電気で賄って走る100%電気自動車です。国内では日産リーフ、三菱アイミーブが量産EVの先駆けとなっていますね。輸入車ではテスラやBMWのi3、フォルクスワーゲン・eゴルフなどが認知度が高いでしょうか。

 メリットはやはり、ガソリンを使わないということです。日本では、発電所で電気を作る際にCO2を排出してしまうので、完全にCO2を出さないかと問われると疑問は残りますが、少なくとも走行中に出すCO2はゼロ。うるさい音も振動もなく、オイルなどの油脂も使わないのでメンテナンスも簡単だと言えます。エンジンがないことで、デザインの自由度が上がり、これからますます個性的なクルマが出てくると予想されます。自動運転などの制御技術との相性もいいので、将来的に今では想像もつかない技術が実現するかもしれません。また、電気代はガソリン代に比べてリーズナブルなので、夜間電力などうまく低価格な電気を利用すると、維持費も抑えられるというメリットもあります。

 デメリットとしては、この10年ほどで1回の満充電で走れる距離は飛躍的に延びていますが、まだまだガソリン車やハイブリッドと比べると、航続可能距離は半分以下。たとえば東京から箱根まで、やっと途中の充電なしで到着できるようになりましたが、まだ往復することは厳しいことも多い、というイメージです。データとしての航続距離は長くても、エアコンを使うと電力をかなり消費してしまうことなど、使用状況で大きく変わるので注意が必要です。

 また、ガソリンなら給油するのに1回5分もあれば済むところ、電気の充電は最低でも急速充電器で30分くらいかかります。200Wのコンセントなら、12時間以上かかることも。やはり、近所のチョイ乗りがメインという人や、ロングドライブをするにしても時間的な余裕のある人にオススメなのがEVです。

 ただ、厳密なパワートレイン種別としてはハイブリッドに分類されるのですが、日産がノートやキックスに搭載している「e-POWER」というパワートレインは、発電専用の小型エンジンを搭載して、そこで作った電気によってモーターのみで走るクルマです。時おりエンジンが作動してブーンという音は聞こえてくるものの、それ以外の時間はとても静かで、モーター走行はEVと同じ感覚。しかも充電ではなく給油をして使えるので、これまでの使い勝手を変えずにEV気分が味わえるクルマとなっています。

6)燃料電池車

 さて、最後はまだあまり馴染みがないかもしれませんが、水素で走るクルマ、FCVです。燃料電池車とも言われています。トヨタ・ミライやホンダ・クラリティが代表的なクルマですね。もうすぐ、ミライは新型が登場する予定となっています。FCVも水素を使って燃料電池で発電し、電気の力でモーターを回して走るので、EVに近いクルマといえるでしょう。

 でも大きな違いは、航続可能距離がかなり長いということです。EVは最大でも400km〜500kmほどですが、FCVは現行のミライで650km、新型では800kmオーバーになると言われています。また、水素ステーションでの水素充填にかかる時間は、1回あたり3分程度。電気を充電するより時間ロスが圧倒的に少ないというメリットもありますね。

 ただし、全国の水素ステーションはまだ少なく、130カ所ほど(2020年10月4日現在)。約2万カ所ある充電スポットと比べて、まだまだインフラ整備には時間がかかりそうです。自宅やよく行く場所の近くに水素ステーションがあればいいですが、営業時間が短い場合もありますので、確認が必要ですね。

 というわけで、多彩なパワートレインのそれぞれの特徴と、メリット・デメリットをご紹介しました。これだけの種類から選べる時代というのは、19世紀にスタートした自動車史上、初めてのことではないでしょうか。ものすごい速さで技術が進化しているので、この先5年、10年でまた変わっていくのかもしれませんが、こうした多彩なクルマたちから、今現在の自分にベストなものを選ぶ悩ましさ。そんな時間をぜひ、せっかくなら楽しんでほしいと思います。


まるも亜希子 MARUMO AKIKO

カーライフ・ジャーナリスト/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
MINIクロスオーバー/スズキ・ジムニー
趣味
サプライズ、読書、ホームパーティ、神社仏閣めぐり
好きな有名人
松田聖子、原田マハ、チョコレートプラネット

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