360cc時代から軽自動車は激戦だった! 壮絶なパワー競争と変わり種モデルバトル (2/2ページ)

70年代には「遊び系」軽自動車も続々登場!

 同じく、ホンダN360の登場より2年早い時点で軽自動車の概念を新たにしようと意欲的な試みを見せていたモデルがあった。ダイハツ・フェローで、当時としては常識的なFR方式と2サイクル2気筒エンジン(26馬力)の組み合わせだったが、ホンダN360の登場でハイパワー化を余儀なくされ、1968年に32馬力のフェローSSをラインアップに加えていた。ホンダN360に対してはわずか1馬力の引き上げだったが、カタログ値が商品評価に絶対的な影響力を持っていた当時、N360の31馬力を最初に上まわったモデルとして軽自動車史に残る存在だ。

 一方、ダイハツは選択肢の多様化という市場の動向に合わせ、思い切った遊びのモデルを開発。フェローピックアップをベースとするモデルで、シャシー、パワートレーン系(エンジンは26馬力)を流用。FRP製のバギーボディを架装するフェロー・バギィとして1970年に市販。限定生産だったが、その後もコレクターズアイテムとして高値で取引される人気のモデルとなっていた。

 このフェロー・バギィと同じタイミングで市販されたのが、現在も根強い支持が続くスズキ・ジムニーだった。堅牢なボディ構造と走破力の高い4WDシステムを持つ軽の本格派オフローダーとして登場。デビューモデルのエンジンは、キャリイの2サイクル2気筒をベースにした25馬力仕様だったが、その後幾度も進化を繰り返すことになる。ちなみにジムニーは、スズキ独自の車両企画ではなく、軽オフローダーの可能性に魅力を感じたスズキが、ホープ自動車から製造権を買い取ったもので、当初はその商品性に関して否定的な見方も多かったが、軽自動車の手軽さと本格的な4WD構造、走破力がファンの心をつかみ、モデルチェンジを重ねて現在にいたるロングセラーとなった軽立志伝中のモデルである。

 このスズキ・ジムニーと同じく、ワイルドな感覚に着目したキャンバストップのオープンモデル、バモスホンダが登場した。フェロー・バギィ、ジムニーに次ぐデビューで、ピックアップトラック(TN360、エンジンは30馬力)をベースに外観をオフローダー感覚で仕上げた2WDモデルだった。とくにオフローダーとしての性能、メカニズムを備えたモデルではなく、現在ならアーバン4WD感覚で使われる車両性格だったが、当時の市場にこの感覚は存在しなかった。

 三菱の軽自動車、ミニカも1969年に2代目のミニカ70へと進化。当時としては常識的なFR方式を採用。初代ミニカが実用性に終始したデザインだったことに対し、市場が成熟化し、ユーザーの選択肢に趣味性が強く反映されるようになった時代を迎え、2代目はスタイリッシュなボディデザインを採用。2サイクル2気筒エンジンを搭載し、当初は26馬力/28馬力だった乗用系の出力は、1970年に入るとすぐに30馬力/34馬力にパワーアップ。さらに、乗用系とは別にスポーツ系のGSSをラインアップし、38馬力の高出力を発生させていた。

 軽自動車の高性能化、車種の多様化は、まだまだ1973年ごろまで続くことになるが、そのきっかけを作ったホンダN360と、その影響を受けたライバルモデル、そして同時期に登場した遊び心のモデルを紹介してみた。


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