レヴォーグはレガシィの正統な後継車か? 5代目ツーリングワゴンと徹底比較した! (2/2ページ)

ファンによってはボクサーエンジンらしさが薄れたと感じるかも

 さて、肝心の走りについてはどうだろう。年代が大きく異なるので直接比較はできないものの、5代目レガシィツーリングワゴンの乗り心地は当時としては素晴らしく、それでいてまるで路面がすぐ近くにあるような、歴代レガシィツーリングワゴンならではの低重心感覚、路面との確実なコンタクト感を持ちながら、しなやかで快適なタッチが基本だった。

 エンジンはゆっくり走っている限り、じつに静か。それでもアクセルペダルを踏み込めば、かつての水平対向ユニットほどではないにしても、フラット4独特の鼓動をダイレクトに伝えつつ、滑らかに、パワフルに、ターボエンジンであればターボらしい盛り上がりを堪能できたものだ。その乗り味をひと言で言えば、しっかりしなやか。また、ステアリングフィールはグレードを問わず、切り始めからきっちりした手応え、ファンな操縦感覚を感じさせてくれた。

 では、新型レヴォーグはどうだろう。エンジンは1.8リッターターボに統一されたが、その新ユニットはじつにスムースで、なおかつスバルのエンジン史上、もっとも静かと言っていい。アクセルを踏み込んでも、まるで電動車のように静かに、滑らかに回り、さすが30.6kg-mものトルクによって、2.5リッター級の胸のすく加速力を味わわせてくれる。だが、水平対向エンジンらしさはほぼない。どんなエンジン形式なのかわからないほど、黒子に徹したエンジンでもあるのだ。

 そして乗り心地、静粛性の洗練度も時代の差を感じさせてくれる部分。とくにZF製電子制御可変サスを奢るSTIスポーツの乗り味は、よりスポーティでありながら、むしろ乗り心地に優れ、一段と静か。電子制御可変サスはステアリングの切り角、路面からの入力、Gに対して瞬時に反応し、制御してくれるため、操安性はもちろん、乗り心地面でも優位なのである。また、標準車のサスはゴムブッシュ、スチールハウジングを用いているのに対して、STIスポーツのサスは高周波ノイズをカットすべくウレタンブッシュ、アルミハウジングを奢っているため、ロードノイズが気にならない=あらゆる場面で静かなのである。

 もちろん、新型レヴォーグの縦型ディスプレイで操作するドライブモードセレクトは、レガシィツーリングワゴン時代にはなかった神器であり(標準車はSIドライブ)、アイサイトの最新制御、3Dマップを使ったカーブ、料金所手前制御、50km/h以下での夢のハンズオフドライブ、アダプティブレーンチェンジアシストも、アイサイトVer.2時代の5代目レガシィツーリングワゴンには望めない最先端の先進機能。そうした自動運転に近い運転支援機能に関しては、もう隔世の感ありだ。

 そんな劇的な動的質感の進化をも遂げた新型レヴォーグだが、WLTCモードで13.6km/L、JC08モードで16.5km/Lの燃費性能だけは、飛躍的に向上していなかったりするんですけどね……。ちなみに5代目レガシィツーリングワゴンの2.5iアイサイトはJC08モードで14.4km/Lでした。

 結論として、無理矢理5代目レガシィツーリングワゴンと比較すれば、レガシィツーリングワゴンにいま乗っても、水平対向エンジンがもたらす走りの魅力、速さ、低重心&AWDならではの安定感、走りの楽しさは健在。一方、新型レヴォーグは走り、機能が全方向に大きく洗練、進化した反面、スバルファンがこだわる水平対向エンジンらしさは激減。

 とはいえ、ステアリングを握れば、その静かで快適すぎる乗り味、十分すぎる動力性能、意のままのリニアな操縦性(STIスポーツ)、山道でのゴキゲンなフットワーク、そしてかつてのレガシィツーリングワゴンでは望めなかった高速道路でのアイサイトXの先進機能に、大いなる感動&満足感が得られることは間違いないと思える。いまでは“大人”になった、かつてのレガシィツーリングワゴン乗りも、一度、新型レヴォーグ STIスポーツEXに試乗してみてほしい。


青山尚暉 AOYAMA NAOKI

2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアント
趣味
スニーカー、バッグ、帽子の蒐集、車内の計測
好きな有名人
Yuming

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