まとめ「カセットテープ」が男女の仲を左右した! オーディオが重要すぎた昭和のドライブデートとは (2/2ページ)

いい音で聴くためのグレードアップを行う人もいた

 もちろん、いい音を聴くためのオーディオのグレードアップ、と言ってもカセットチューナーやリヤスピーカーのグレードアップ程度にすぎないが、その頂点にあったのが、マニア垂涎のナカミチだった。そのカセットチューナーにa/d/s =Analog & Digital Systemのコンパクトスピーカー(大きさで言えばBOSE 101のような感じ)を接続し、セダンタイプのクルマのリヤトレイ左右の置き、メーカーのステッカーをリヤウインドーのセンターに貼るのが”通”、カッコ良かった記憶がある。

 さすがにボクはそこまでやらなかったけれど、昭和50年代中半のある日、事件は起こった。WEB CARTOPの「衝撃の昭和エピソード! クルマが「ステータス」だった時代のモテカー伝説とは」の記事中に出てくる、信号待ちナンパから付き合うことになった、117クーペに憧れていたアグネス・ラム似の子は、どっぷり洋楽派。最初の相模湖デート、2度目の葉山デートでも、こちらが攻めまくるユーミンやハイファイセットではまったく歯が立たない。

 春の桜満開の東京千鳥ヶ淵ドライブデートでは、逆に、「これ聴いてみて」と彼女が持参した、まとめカセットテープを、117クーペのカセットデッキにガチャリと入れることになった。その最初の1曲がパティ・オースティンのデビューアルバム「END OF A Rainbow」(1976/CTIレコード)の1曲目でもある、以来、ボクたちにとって最高の思い出の1曲となった「SAY YOU LOVE ME」(邦題 愛していると言って)である。

 まるで春の風に乗ったような軽やかでさわやかなメロディー、演奏、デヴィッド・マシューズのプロデュースによるシンプルなアレンジ、最高のバックミュージシャン、パティ・オースティンの口笛までもをフューチャーしたその曲は、今思えば、彼女に対して好きという気持ちはあっても、なかなか言葉に出せないボクへのメッセージだったのかもしれない。

 車内でパティ・オースティンといっしょに「SAY YOU LOVE ME」を口ずさむ、というか大声で熱唱する彼女の笑顔が、もう数十年前のことだというのに、記憶の中にしっかりと刻まれているぐらいなのである。クルマのオーディオが、カセットデッキから再生されるその1曲が、2人の距離をグッと近づけてくれたことは言うまでもない。

 そして、それ以来、ボクもブラックミュージックをはじめとする洋楽ファンとなり、パティ・オースティンやマイケル・ジャクソンの音楽プロデューサーでもあるクインシー・ジョーンズなどに傾倒していくことになる。

 彼女との出会い、そして昭和のクルマデートの成否を左右する、アナログレコードからダビングした、カセットテープから流れる「SAY YOU LOVE ME」が、それからのボクの音楽人生、いや人生を大きく変えてくれた1曲と言っていい。約6分という長さも、じっくりと「愛していると言って」をアピールするのに最高だろう(女の子から、ですが)。昭和のドライブデートに、これほどぴったりな曲はない。どころか、今でも必殺曲になる可能性がある。今でも中古CDで手に入るので、この春のドライブデート用の1曲を探している人は、ぜひ!!

 動画リンク https://www.youtube.com/watch?v=dtcZBtIgsi0


青山尚暉 AOYAMA NAOKI

2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアント
趣味
スニーカー、バッグ、帽子の蒐集、車内の計測
好きな有名人
Yuming

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