想像以上に「現実的」な理由だった! トヨタが新型MIRAIを猛プッシュする事情 (2/2ページ)

水素を活用するための計画は国内外で進んでいる

 とはいえ、現時点では水素を充填できる水素ステーションは国内で137カ所(2020年末時点)と、インフラ整備はまったく進んでいないといえる状況。はたして、政府が進める水素社会に賭けるというのは、リスクが大きいようにも思えます。

 政府も手をこまねいているわけではありません。令和3年度の「燃料電池自動車の普及促進に向けた水素ステーション整備事業費補助金」は最大110億円という大事業になっています。もっとも、水素ステーションの建設費は最低2億円といわれていますから、この程度の補助金では一気にインフラ整備を進めるには到底足りないともいえますが……。

 水素ステーションのようなインフラを整備しても、肝心の水素をどうやって供給するのかという問題もあります。クリーンエネルギーとして考えると、太陽光や風力といった再生可能エネルギーによる発電をベースにした水分解により水素を製造するのが王道で、日本国内では2020年に世界最大級の水素製造施設「FH2R」が福島県に作られています。

 また、オーストラリアでCCS(CO2回収・貯留)を併用した褐炭発電で水素を作り、液化して日本に輸送するというアイディアも実行が進められているなど、2030年以降の水素社会に向けて国内の各企業が尽力しているのも事実。トヨタがFCV「MIRAI」を推しているのも、そうした背景を考えると十分に理解できるのです。

「日本政府が水素社会を目指すといっても、世界は電気自動車に向かっていて、FCVはガラパゴス化する」と心配する声もありますが、欧州連合(EU)も水素の多角的な活用を目指した戦略を発表しています。

 そうした流れもあって、先日ジャガー・ブランドを2025年から完全に電気自動車だけのブランドにすると発表したことで話題のジャガー・ランドローバーでも、水素燃料電池の開発に取り組み、2021年中にFCVプロトタイプの公道実験を始めると発表しています。欧州ブランドではメルセデス・ベンツもFCVに積極的で、プレミアムブランドを中心に水素で走るクルマというのは増えていく可能性も十分に考えられるのです。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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