ブレーキの強化は「高性能品」への交換だけでは不完全! クルマの「重量バランス」と「タイヤ」が重要だった (2/2ページ)

トータルでのバランスを考えて資金を上手に配分したい

 また、同じブレーキ部品でも、車両の前後重量配分によって制動距離が変わることもあるだろう。前荷重が大きい前輪駆動(FWD)では、ブレーキをかけるとさらに荷重移動によって前輪の負担が増え、ブレーキとタイヤに負担が増える。

 後輪駆動(RWD)も、やはり前輪側に重量配分が多めになるのはFWDと同様だが、その比率(負担の割合)が異なる。RWDのほうが前輪への負担がFWDより軽くなる。

 日産GT-Rは4輪駆動だが、トランスアクスルといって変速機を後輪側へ配置している理由は、前後重量配分を均一に近づけようとの考えによる。

 ミッドシップになれば、エンジンと変速機が客室の後ろに来るので、前後重量配分は後輪側が重くなる。そのうえで、ブレーキをかけると前輪側に荷重移動するので、前輪のブレーキやタイヤ性能は重要だが、タイヤ寸法が後輪より小さいのは、前輪の負担が後輪に比べ少ないことの表れだ。

 ドイツのBMWが前後重量配分の均等(50:50)にこだわるのは、単にハンドルを操作したときの挙動の素直さを求めるだけでなく、ブレーキを掛けたときに前輪の荷重が増え過ぎず、4輪で適切な減速ができることを求めるためでもある。

 ブレーキ性能を向上させようと考えたとき、ブレーキ部品の高性能化はもちろん、タイヤ性能と車両の前後重量配分まで考慮し、手持ちの資金を上手に配分するといいだろう。また、タイヤを存分に働かせるためにも、ホイールアライメントを確認することも薦めたい。


御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
日産サクラ
趣味
乗馬、読書
好きな有名人
池波正太郎、山本周五郎、柳家小三治

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